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2011年01月23日08:31

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小説の中の謎(60)  星の王子様とは誰のことか

 サン=テクジュペリ「星の王子様」は、小さい星に一人住んでいると思い、いつも会話するのは一本のバラの花で、これが気位が高く注文が多いので世話が大変である。庭には小さい三つの盛り土があり、これを火山に見立て、そのうちの一つは死火山だそうである。さらに、バオバブの木が育って庭を占領しないように草の芽摘みを欠かさない、という孤独で変なことを考える子供である。
 それから、それぞれの星に住んでいる他の星をめぐり、変わった癖のある人と出会う。なかには、三本のバオバブに星を占領されてしまった子供もいるとのこと。
 そして、地球にやってきて、草の芽を食べてくれる羊の絵を描いてもらうが、これがバラも食べてしまうとわかり、困ってしまう。何のためにバラにとげがあるのか。
 こんな子供がいるのだろうか。献辞では、大人は忘れてしまっているが、もとは子供だったと書き、続いて、子供の時、大蛇のボアが象を呑みこんだ絵を描いて大人に見せたが、帽子の絵だとみられてがっかりしたとのこと。これは星の王子さまに似ている。星の王子様は孤独な空想家サン=テクジュペリのことだったに違いない。
 こう思ったのは、大江健三郎「自分の木の下で」や「私という小説家の作り方」を読んだせいでもある。彼も、愛媛県の山間部の谷間にある集落で育った子供時代には、アザラシを飼っていると思い込みそれを皆の前で話したり、死ねば魂は自分の木に帰ると祖母に聞かされ、それらしい木の下で大人になった自分が現れるのを待っていたり、などサン=テクジュペリに負けていない。
 これは作家になるように生まれついた人に特有のことなのか。それとも、サン=テクジュペリのいうように、子供はすべてそうなのであって、大人になると前の夜みた夢を忘れるように忘れただけなのだろうか。
 私もなんとか思いだして、子供の自分に会いたいものだ。
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