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2024年05月19日12:26

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フィクションと現実(91) ベルトルト・ブレヒト「異化作用」

 「ブレヒトは政治やマルクス主義との関わりから、役への感情移入を基礎とする従来の演劇を否定し、出来事を客観的・批判的に見ることを観客に促し、見慣れたものに対して奇異の念を抱かせる「異化効果」を提唱し、戦後の演劇界に大きな影響力を与えた。」ウィキから。一部略。
 と言うことだが、新劇自体がマルクス主義者の巣窟だったわけで。なぜそうなったのか知らないが。
 で、ブレヒトの代表作が「三文オペラ」1928年。コソ泥たちの親分が取り締まりに困ったのか国王に請願デモをしかける。主人公格は匕首マッキーで、彼の唄が有名。
 革命の比喩なのだろうが、マルクスのは工場労働者プロレタリアートのはずだが、ボリシェビキのロシア革命1917年 の後なので、マルクスのきれいごとでは革命にならないと思ったのかもしれない。
 実際、いわゆる「革命」の実態は、暴動による政権の転覆だろう。ブレヒトの理論は日本共産党の平和革命論への皮肉になっている。

 浅利慶太「劇四季」は早い段階で政治を脱して芸術に戻ったとのことだが。私はテレビで浅利慶太演出のアヌイ「ひばり」(ジャンヌ・ダルクの生涯)を見ただけだが。

 本題に戻って、「異化作用」だが、今村昇平監督「豚と軍艦」1961年 を思い出した。これ は米軍基地の街・横須賀の暴力団抗争を描いたものだが、刑務所から出所してきた幹部(丹波哲郎)が養豚業を正業にしている子分(長門裕之)たちの豚鍋を食べる場面で、金歯を吐き出した。
 実は抗争相手の暴力団を殺したものの始末に困って豚の餌にしてしまったので。
 それを知った幹部が吐き出して血まで吐いて、心配になって病院でレントゲンを受けて問題ないと言われたのだが、レントゲン写真を盗んでみると肺が真っ黒になっていた。
実は、他人の写真だったのだが、死の恐怖に取りつかれた幹部は発狂状態になってしまった。こまで何人も殺したのだが。
 今村監督は、なぜあそこまで死に怯える暴力団幹部を描いたのかと問われて、丹波はかっこよすぎるので、青年たちが暴力団幹部役の丹波にあこがれないようにしたと答えた。
つまりブレヒトの「異化作用」そのものだったわけで。

 今村晩年の「うなぎ」1997年 も面白かったが、浮気した妻を殺して服役した男が出所した後に飼うことになったうなぎを見つめて暮らす。
 それだけで良かったのかもしれないが、新しい愛人が現れてハッピー・エンドとなった。
 この「うなぎ」の意外性自体が異化作用だったのだろう。


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