わたしの子供・青年の頃はイタリア映画だった。
１．まずは、ヴィットリオ・デ・シーカ監督である。
「自転車泥棒」1948や「屋根」1956である。「屋根」は戦後のイタリアで住宅不足で新婚夫婦お親兄弟と同居でセックスに困る。で、河川敷など共有地に勝手に建てるのだが、警察の見回りに見つかればおしまいである。ただし、住宅不足のことでもあり、家と認められれば見過ごしてもらえる。その条件とは屋根があること。
なので、夜中に屋根まで作ってしまえば勝ちなのである。
バスなど交通手段があまりなかったのだろうが、自転車は仕事に行くのに必須条件だった。やっと手に入れたのだが、「自転車泥棒」に盗まれてしまった。その自転車を何とか見つけようと奮闘する。いずれも、戦後間もない敗戦国イタリアでの生活を描く庶民のリアリズム映画であった。
テーマ音楽で有名な「ひまわり」1970年 もデ・シーカ監督。第二次大戦でイタリアからウクライナに出征したのだが、夫（マルチェロ・マストロヤンニ）は戦争が終わっても帰らないし、当局から戦死の知らせもない。で、妻（ソフィア・ローレン）がウクライナまで探しに行く。汽車の窓から一面のひまわり畑が見える。向日葵から油をとるのである。日本で言えば菜種油か？ 与謝野蕪村「菜の花や 月は東に日は西に」は、行けども行けども菜の花畑の江戸時代を描いている。
与謝野晶子「ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟(コクリコ) われも雛罌粟」
今５月中旬で盛りは過ぎたようだが、土浦でもあちこちの道端でコクリコ（ポピー）の赤やピンクの花が咲いていた。向日葵と同じく種から油をとるとのこと。日本の場合はアニメ映画「コクリコ坂から」の影響かもしれないが。
マストロヤンニとソフィア・ローレンはイタリアを代表する人気俳優だったが、この映画のギャラはローレンの方がずっと上だったとのことで、その点を記者に聞かれたマストロヤンニは、あの「おっぱい」にはかなわないからね、と答えたとのこと。
今ならセクハラになったかもしれないが、ウーマン・リブ以前は鷹揚な時代だったのだろう。
しかし、ウクライナは今プーチン・ロシアに侵略されて、よくよくついていない。日本も元々が侵略的拡大的南下政策のロシアが北に居て困るのだが。
２．ロベルト・ロッセリーニ監督
「ロべレ将軍」1959年
時代背景は第二次大戦末期で、ムソリーニはパルチザンに処刑されたのだが、ナチス・ドイツに再占領されていた。
そこにムッソリーニへの抵抗運動のリーダーだったロベレ将軍が帰国しようとしていた。誰だかわからない国内の抵抗運動の指導者と合流しようとしたのである。それをナチスは察知して、ロべレ将軍と一緒に逮捕する計画だったのだが、それを知らない警官が上陸してきた将軍を射殺してしまった。
そこで、ナチスは詐欺師で逮捕していた男に、ロべレ将軍のふりをして抵抗運動の指導者を見つければ釈放するとして、大きな行動のようなところに集めていた疑いある人々の中に、ロべレ将軍として入れたのである。
思惑どうりに秘密の指導者がロべレ将軍に近づいて、自分は銀行家なのだが、次々に国内の指導者が逮捕されるので自分がやらざるを得なくなったと告白した。
それを聞いた将軍（実は詐欺師）は、講堂の上の段に上がって、自分はロべレ将軍である。祖国のために死のうと呼びかけて、ナチスの警官に撃ち殺されて終わる。
３．フェデリコ・フェリーニ
� 崙察�1954年 リアリズム映画
戦後すぐの貧しい時代を背景に、自動三輪で街を渡り歩く力自慢の大道芸人と彼に買われた妻（フェリーニの妻のジュリエッタ・マシーナ主演）の物語。
�◆峇鼎だ験茵�1959年
イタリアの奇跡の復興を経て、退廃的な暮らしをする上流階級とそれをネタにするパパラッチ記者（マルチェロ・マストロヤンニ）。最初の場面で、キリスト像をヘリコプターで運ぶ場面が有名だった。ラストシーンは海岸に怪魚が打ち上げられ、少女が向こうから呼びかけるのだが、マストロヤンニには聞き取れない状況を写していた。
フェリーニは無垢な少女を気にしていたらしい。
➂「８と１/２」1963年
ノイローゼになった映画監督（マストロヤンニ）が温泉地で療養しながら、これまでの生涯をシュール・リアリズム風に回想する。
少女が「アサ ニシ マサ」と呼びかける場面があるが、これは「アニマ」（ラテン語で女性性の意味）の意味で、女性（女優）に惹かれ続けたというフェリーニの告白。
「魂のジュリエッタ」1965年 同じく女優マシーナの精神史。
４．ルキノ・ヴィスコンティ
� 崋禺圓里垢戮董�1960年
アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ主演
ネオレアリズモの集大成的大作とのことだが面白くなかった。
�◆峪廓� 」1963年
バート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ主演
ガリバルディの進軍を背景にして、没落の危機にある貴族の物語。貴族の青年（アラン・ドロン）も反対を押し切ってガリバルディに加わる。
歴史映画であるが、貴族出身のヴィスコンティの精神史でもある。
��「異邦人」1967年 主演マルチェロ・マストロヤンニ
若く自動車事故で死んだ原作者アルベール・カミュの未亡人が原作を一切変えるなと条件を付けたせいか、精彩がなかった。
それに主人公は30歳と設定されているのに、この時のマストロヤンニでは歳を取りすぎで、イメージが狂ってしまった。
�ぁ屮戰縫垢忙爐后�1971年 主演ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン
トーマス・マン原作で、美少年に惹かれる中年男を描いている。単純だが印象的な映画だった。
５．ミケランジェロ・アントニオーニ
「欲望」1966 アントニオーニはイタリア人だが、この映画はロンドンが舞台になっている。
1960年代中盤のロンドン。人気カメラマンの主人公がたまたま公園で撮った写真が原因らしい不可解な出来事を描く。シュール・リアリズム風で、麻薬やネパールに惹かれる青年男女の生き方を描く。
写真を現像したら中年男性の死体が映っていたのである。驚いて現場に行ったが死体はないし、新聞の記事にもなっていなかった。
他に「情事」1960年 も観たが、よく分からなかった。
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