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2013年06月30日11:38

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時代の中で(98)  三浦和義事件

 三浦和義「不透明な時」二見書房1983 を読んだ。ブックオフで買ったまま長い間積読だったのだが、私の人生も不透明な海で、論理的・合理的なのは小さい島だけだったと思い至って、これを思い出したのである。
 この書は、三浦氏のマスコミに向けた弁明の書であるが、実際に逮捕されたのはこの本の出版の後になる。題名の由来は、マスコミから証言がころころ変わると、ますます怪しいとされたことに対して、あいまいな記憶をもとにしたためで、会社の帳簿などに当たり出来る限り正確にこれまでの人生を再現するとしたが、やはりどうしても曖昧な部分は残ってしまう、という意味である。
 この本とウィキにより三浦氏の履歴を書いておく。何があったのか理解するのにどうしても必要なのである。
 
 三浦氏は1947年生で2008年61歳で死亡、ロスアンジェルスの留置所での自殺だった。
 1967年20歳 水戸少年刑務所で10年の刑に服する。
 1974年27歳 仮釈放
 1976年29歳 アメリカでの古着の買い付けを始める。三浦兄弟商会設立。
        楠本(旧称白石)千鶴子と愛人関係になる。
 1977年30歳 フルハムロード設立。
        千鶴子さん板垣経理士を紹介。
 1978年31歳 千鶴子さんと板垣経理士の愛人関係発覚。両人の辞任。
 1979年32歳 千鶴子さん離婚にトラブル?主人のサド・マゾ写真を三浦氏に預ける。
    3月 千鶴子さんアメリカへ行くための借金を申し込む。(450万円ほど?)
    3月29日 千鶴子さん出国。ロス到着。以後、行方不明。
    4月 三浦氏宛に借金返済のためのキャッシュカード送付。
 1980年33歳 一美さんと結婚。
 1981年34歳 8月 一美さんロスのホテルで殴打、暴行を受ける。
        11月 一美さんロスで銃撃を受け、1年後死亡。
 1983年9月36歳 この時点でフルハムロード順調に発展とのこと。
 1984年4月37歳 フルハムロード破綻。
        週刊文春「疑惑の銃弾」連載
 1985年38歳 逮捕。一美さん殴打事件で有罪。

 年次は分からなかったが、ロスの身元不明遺体が千鶴子さんと特定された。   
 2003年56歳 一美さん銃撃で無罪判決。
 2008年61歳 グアムの渡航先でアメリカ警察により逮捕。
        ロスの留置所で自殺。 

 三浦氏は、アメリカで古着を仕入れて日本で販売するというビジネス・モデルは自分が発明したものだとのプライドをもっている。商品を見る目が確かなのだと。だから、副題が「フルハムロード物語」になっているのである。
 たしかに、アメリカへ頻繁に買い付けに、それも卸しを探して安く買い付けるという、活発な行動が印象的である。英会話は苦手だとのことなのだが。
 同時に、結婚はしているのであるが、女に不足はないとする女性関係が派手であり、遊びと割り切っている。その一人千鶴子さんであり、フルハムロードの経理係として雇用している。             
 本書における女性関係の中心を占めるのは千鶴子さんであり、それは千鶴子さん行方不明後にキャッシュカードを使っていたという疑惑に応えるためであろう。一美さんのことは、結婚生活も短かったこともあり、二つの事件の記述のみといってよい。

 さて、千鶴子さん不倫? でを解雇したのちも付き合いが、つまり愛人関係が継続していたらしいのだが、問題は借金を申し込まれ、証文もなしに450万円ほどを貸したことであろう。
 当時、千鶴子さんは離婚調停中で、すぐに慰謝料が入るからそれまでの間貸してほしいとのことだったそうである。事実、それから半月ほどでキャッシュカードが三浦氏のもとへ送られてきたとのことであった。
 千鶴子さんはなぜ半月が待てなかったのであろう。
 三浦氏は千鶴子さんに腹を立てていたはずである。それなのに、450万円を証文もなく、そもそもどれだけ貸したのか記憶もないままに貸したとのことである。
 三浦氏はそれぐらいの金は常時あったとしているのであるが、しかし、それは彼も言っているように遊び金ではなく、いつ仕入れに必要になるか分からない金なのである。事実、キャッシュカードが手に入った時から使い始めている。・・・なぜ貸す? 信用できる人だったからと彼は言う。しかし、何が会って慰謝料の払い込みが遅れるか分からないのである。

 さらに、千鶴子さんとの関係では、愛人関係以外で彼女が何をしているのか分からない。謎の多い女性だったとしている。(つまり、ロスで謎の死をとげることもありえると示唆しているのであろう)
 ご主人のサド・マゾ写真を持っていることで、誰かに狙われていると恐れていて、その写真を三浦氏に預けたとのことであった。三浦氏はキャッシュカードが送られた後、その写真を裁断して廃棄したとのことである。
 つまり、千鶴子さんのことでは、三浦氏は何の証拠も持っていないのである。まことに、不透明と言わざるを得ない。
 また、千鶴子さんの出国と三浦氏のロス滞在は重なっていて、これに疑惑を向けられたのであろう。この点では、領収書などを示しながら、千鶴子さんに会う時間はなかったとする。(むろん、実行犯が別人ならアリバイにはならない。)

 ということで、千鶴子さん事件の疑惑は解けず、ロスの警察の本命も千鶴子さん事件だったとのことである。一美さんについては既に日本で無罪で、アメリカでも改めての逮捕はできない。

 残念ながら、というか、当然ながら疑惑の晴れる気配もなかった。しかし、三浦和義というキャラクターは興味深いものがある。
 彼は、自身の眼力で古着を集め、それを日本で高く売ることに快感を覚えていたのであろう。冒険商人・・・というイメージが浮かんでくる。
 この冒険商人は、買い付けを見誤ったことがないらしい。商売は、「疑惑の銃弾」で破綻するまで発展していたとのことなのだ。確かに、そうでないと、保険金が必要になるのだった。

 家田荘子「三浦和義氏からの手紙」幻冬舎 平成10年
 島田荘司「三浦和義事件」角川文庫 平成14年(単行本平成9年)もあるのだが、分厚過ぎて。どちらも1998年頃だから、まだ三浦氏は健在だった。
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