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2012年10月18日10:27

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たましいと宗教(5)  ヨガが密教だった?

 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1860489572&owner_id=34218852
 以前にレヴューしたものと大乗仏教の形成過程の見方が違うので参考までに。

 小林良彰「空海とヨガ密教」学習研究社2007 は、密教の本体がヨガであること、従ってすでに「密教」ではなくなっていることを空海の活動を通じて解明し、併せて、彼の活動を支えた母方・阿刀(あとう)氏の実体を明らかにしている。
 著者は1932年生で、東大西洋史学科卒業後、阪大大学院経済学修士課程を修了した経済史学研究者であるが、空海の研究を始めたのは、夫人が空海の母の生家である多度津の寺院「仏母院」出身で、ここはもともと阿刀氏の屋敷跡だった、という縁による。

 大乗仏教の発生には、アーリア人(バラモン・ヒンズー教)とドラヴィダ人の抗争、そこにモンゴロイドのキラータ人(その一派が釈迦族)が加わるという興亡の過程があったとのことである。そして、密教すなわちヨガとは、もともとドラヴィダ人の修行法だったらしいのである。
 紀元前1500年にドラヴィダ人のインドにアーリア人が侵入し、徐々に版図を広げ前500年には南部を除いて制圧した。その過程がインドラ神(アーリア人の神、仏教では帝釈天)とヴィロチャーナ(ドラヴィダ人の神)の抗争として神話化されている。このヴィロチャーナはマハー・ヴァイロチャーナ・タターガタ(仏教では大日如来、毘盧遮那仏つまり奈良の大仏)の子または親とされている。
 一旦釈迦族の仏教に押されたバラモン教は、バラモンの専有物だったヨガの技法の一部を公開し人気を得て、ヒンズー教(ヨガのシヴァ神)として盛り返してきた。そこで仏教もカニシカ王(144-173)の時、ヨガの神大日如来をとりこんで大乗仏教が成立した。著者の説明がいささか回りくどいので、簡単すぎる要約ではあるが。
 つまり、仏教の大乗化とは、著者の見方を推察すれば、それまでの秘密の修行法の一部を一般信者に公開することのようなのである。これまでは成仏するためには自身で修行しなければならないとする伝統仏教を小乗として退け、阿弥陀仏などの法力で大衆を成仏させるとして大乗仏教が成立したと考えていた、というかこれが定説のはずだった。しかし、著者の見方によれば、簡易版のヨガの修行を都会の教室で教えるという形の大衆化のことのようである。ヨガの修行とは初歩では健康法で、最終的には超能力を得るためのもので、かってはすべて師と弟子の間の秘密の相承だったが、大衆化をはかるために、それはヒンズー教徒との信者獲得競争のためだったのだが、ヨガの一部を公開したわけである。

 有名な般若心経の「観自在菩薩、行深般若波羅密多時・・・・」というのは、観音菩薩が密教のヨガ行をしている時・・・となるのだそうである。

 ヨガには初歩から最終段階まで何段階化あり、公開されているのは初めの方とのことである。1.マントラ・ヨーガ、2.ハタ・ヨーガ、3.ラージャ・ヨーガ、4.アヴィヤンカ、以下未公開5.クンダリーニ・ヨーガ、6.ケーチャリ・ムドラー、7.ヴァジロリー・ムドラー である。気功とか導引などはハタ・ヨーガに属するとのことである。座禅では座ることだけが強調されているが、それだけでは修行にならないとされる。つまり、精神統一とは体全体の動きも含めて行われるべきものなのである。

 桐山靖雄「阿含宗」の修行は超能力を目指しているし、オウム真理教も本来はそのためのものであった。超能力も一歩間違えば大変なことになる。

 実際、これまで密教と言えば曼荼羅で、結局よく分からないままだったが、秘密の修行法ヨガのことで、シャカも修行していたものといわれれば納得できる。秘密とされたのは危険だからとのことである。また、社会通念上問題になるセックスやエクスタシー重視の理趣経なども公開できなかったであろう。

 空海が唐に渡って恵果の継承者に指名されたのは有名な伝説であるが、著者は、実質的な密教の師はインド人のムニリシ三蔵と般若三蔵だったという。恵果の名はいわば箔付けだったと推定している。

 そして、いささか驚いたのは日本でも有名な仁王様とは、アレキサンダー大王遠征に置いて行かれたガンダーラのギリシャ人たちから取り込んだヘラクレスだというのだ。彼の持つ武器「両端が膨らんだ杵のようなもの」とは三鈷杵、金剛杵のことで、密教では武器を兼ねた法具とのことである。

 さて、もう一つのテーマである阿刀氏のことであるが、物部氏の一派で、本貫の地は河内の国跡部の郷、現在の八尾市、そこの跡部神社が氏神で、一族には玄肪(日編)僧正、義淵僧正、叔父の阿刀大足(おおたり)など、父方の佐伯氏よりも優勢であった。物部氏も滅びたのは本家だけだった。彼らが、天才の誉れ高い空海を支援して、満濃池をはじめ各地の土木事業や東寺、高野山の建設とその後の維持管理にあたったとのことである。

 本書は実証性と言う面では弱いと思う。しかし、密教と言うのが何なのか言いきってくれたことは大きいと思う。それまでは、なんとなく分かったような気になっていたのだった。
 また、大乗仏教とドラヴィダ人の宗教との接点についても、確かにあり得ると思われる。なにしろ彼等はインダス文明の担い手だったのだ。遺跡のほかは何も残さず、ではないだろう。もっとも日本では、日本語の起源をドラヴィダ人の一派のタミル語から来ているという大野晋などの説もあるが。
 
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