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2013年10月02日11:17

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フィクションの中へ（１３）　　恋愛鳥の木乃伊（ミイラ）

　題のない歌　萩原朔太郎

南洋の日にやけた裸か女のやうに
夏草の茂つてゐる波止場の向ふへ　
ふしぎな赤錆びた汽船がはいつてきた
ふはふはとした雲が白くたちのぼつて
船員のすふ煙草のけむりがさびしがつてる。
わたしは鶉のやうに羽ばたきながら
さうして丈の高い野茨の上を飛びまはつた
ああ　雲よ　船よ　どこに彼女は航海の碇をすてたか
ふしぎな情熱になやみながら
わたしは沈黙の墓地をたづねあるいた
それはこの草叢の風に吹かれてゐる
しづかに　錆びついた　恋愛鳥の木乃伊であつた

　恋愛鳥の木乃伊？　時々、思い出すのだが不思議な詩である。どう理解すればよいのか長年悩んできたのであるが、このてんでんばらばらなモチーフ群はシュールリアリズムのそれに似ているのかもしれない。また、同時に、夢の連鎖するイメージとも思える。・・・何だか、こんな絵があってもよさそうに思えてきた。

　①日焼けしたヌード、赤錆びた汽船、
　②白い雲、船員煙草のけむり
　③羽ばたく鶉　背の高い野茨
　④捨てられた碇・・・これがなければ船は停泊できない
　⑤墓場を訪ね歩く
　⑥錆びついた　恋愛鳥の木乃伊

　確かに、連関するイメージがして継起している。
　そして、澱のように心に沈んでいる挫折した恋の女性である。彼女を探していた？　あるいは見つけたくなかったのに出くわしてしまった。

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