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2023年11月28日11:42

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フィクションと現実(29) 小説の主人公たち

 1.素朴な青年の教育問題
 漱石「三四郎」
九州から東京帝大に入学した素朴な青年が、与次郎、里見美祢子(平塚雷鳥がモデルとか)、広田先生等の変人に教育を受ける。寺田寅彦がモデルの野々宮だけはまともな学者だった。
 トーマス・マン「魔の山」
結核にかかった単純で素朴な青年ハンス・カストルプが、高原のサナトリウムで出会った変人たちに教育される物語。そういえばルイス・キャロル「不思議の国のアリス」と設定が似ている。

 2.野心家の末路
 スタンダール「赤と黒」ジュリアン・ソレル
 映画「太陽がいっぱい」1960年主演はアラン・ドロン
アラン・ドロンは美青年で、ジュリアン・ソレルも記憶力抜群の美青年だったがどちらも逮捕され、ジュリアンは断頭台で、恋人だった侯爵令嬢マチルドがサロメのように首を捧げ持った。
 原題はPlein Soleilで、1960年のフランス・イタリアの犯罪映画。パトリシア・ハイスミスの原作では犯罪は発覚せずに、その後もますます活躍する。
そういえば、昔、広島の福山市に住んでいた頃、近くにソレイユという喫茶店があった。

 3.ヨーロッパ統合運動
 マルタン・デュ・ガール 1881-1958 「チボー家のジャック」
時は第1次大戦後のフランス。二度とヨーロッパで争いのないように統合運動をしていたジャックはナチスの手先に射殺された。
 映画「カサブランカ」1942。仏領モロッコのカサブランカが舞台だが、当時フランスはナチス・ドイツに占領されていた。
 そこで酒場を経営していたリックの所に元恋人のイルザと夫のラズロ(ヨーロッパ)がアメリカへ亡命するためにやって来た。
 カサブランカの酒場の経営者リックはイルザの元恋人で、映画の主人公。
ラズロのモデルがヨーロッパ統合運動の指導者の日系人リヒャルト・クーデンホーフ・カレルギー伯爵(母が日本人のクーデンホーフ青山光子)

 4.北海道だけを舞台にした小説
 原田康子「挽歌」1957 当時、北海道だけでは売れないので東京とも関連付けるように指導されたとのこと。釧路や札幌が舞台。
 丁度、日本最初の南極越冬隊の時で、日本に帰って来た西堀栄三郎隊長は「日本ではつまらない小説がもてはやされていた」などとぼやいていた「南極越冬記」岩波新書。
 三浦綾子「氷点」1965(朝日新聞の懸賞に応募した小説)旭川が舞台。
クリスチャンで短歌作者だが雑貨屋だった女性の最初の小説。養母に追い詰められ心が氷りついて自殺を図る少女の、それでもキリスト教から見れば罪なのである。
(病気に苦しめられ恋人とも別れざるを得なかった著者自身の体験でもあるが。)
 この後北海道への旅行ブームになったように思う。私も大学に入学した後北海道旅行した。

 5.アリアのような歌謡曲
 2020年朝ドラ「エール」の古関裕而作曲の「長崎の鐘」や「イヨマンテの夜」はオペラのアリアのような迫力があると思う。
もともとオペラに関心が深かったので、そうなったのではないだろうか。

 6.軽井沢  高原列車が走り、高原野菜を都市へ運ぶ。
明治になって外国人の避暑地用に開発された。
戦後最初の天然色映画「カルメン故郷に帰る」木下恵介監督1951年 では、舞台になった軽井沢をさんざん笑いものにしていた。
 木下恵介は「喜びも悲しみも幾年月」1957(確か、学校の鑑賞ということで全員見に行った)など、人情ものだと思っていたが、性格の悪いところがあるようだ。
で、高度成長とともに冬野菜を夏でも生産する野菜産地となった。なので、野菜に季節感がなくなったなどとクレームをつけられた。


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