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2023年11月04日17:35

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フィクションと現実(12)  オマージュ追随小説

 ベストセラーに追随する小説があるが、たいていは原作よりだいぶ落ちる。しかし、原作に匹敵する、あるいは独自性を持った追随小説もある。

 1.アメリカ映画「フック」(原題: Hook)1991年
 原作では、健忘症のピーター・パンはしばらくロンドンに来ないうちにウェンディが結婚してしまったことに気が付いた。それでも時々やって来たのだが、(ここから追随作)ウェンディの孫娘と結婚してアメリカに渡った。
 そして、弁護士になった40歳のピーター・バニングは、猛烈な仕事人間となり、妻や子どもたちとの約束も破ってしまうのである。(もともと健忘症なので)
 そんな一家が妻の祖母・ウェンディのいるイギリスに里帰りした晩、子供たちが何者かに誘拐されてしまう。誘拐犯はフック船長だったが、もちろんピーターには誰のことか分からなかった。
 途方に暮れていたピーターに、祖母のウェンディは空を自由に飛ぶことのできるピーター・パンであったことを教えた。
 それでも、戸惑うばかりのピーターのもとへ、妖精のティンカーベルが現れて、間抜けのとんまと罵って(きれいなのだが、元から口が悪く、ウェンディに嫉妬していた)、元のように飛べる特訓をやらせた。で、ふらふらしながら飛び立って、ネバー・ランドへと向かい、待ち構えていたフック船長と戦う羽目になってしまったのである。

 2.映画「モリエール 恋こそ喜劇」
 モリエールの戯曲「タルチョフ」(詐欺師)を下敷きにしたモリエールの伝記映画で、喜劇誕生物語である。かれは裕福な商人の息子であることを利用して劇団を作って興行しては赤字を蓄積していた。
 とうとう父親が、これ以上援助が欲しいならと交換条件を提案した。それは美人の未亡人にほれ込んだ富豪の商人の所に住みこんで、うまく結婚の申し込みができるように演技指導することだった。
 仕方なく、タルチョフ神父を名乗って富豪の家にやって来て演技指導するのだが、相手の未亡人とも知り合って、彼女の賢明さに引かれることとなった。
 本当は悲劇をやりたいと言うモリエールに(ラシーヌのような悲劇が演劇の王道だった)、その前に一座を率いて、地方を回って喜劇をやりなさいと助言した。
 そして、何年間か旅回りをして人気一座になってパリに戻ってきた。さあ、これから悲劇だと張り切るモリエールのもとに、未亡人が会いたがっているという伝言が届けられた。死の床にいた未亡人は、モリエールに喜劇を続けなさいと助言したのである。

 3.バッジ・ウィルソン「こんにちはアン」上・下新潮文庫2008 新潮文庫(原題「before green gables」2008)
 プリンス・エドワード島に来るまでのアンを、原作に記されているアンの切れ切れの暮らしの様子から、アンの前身を復元したもの。
 問題は、物心ついて以来の子守女だったアンなのに、なぜ物知りで、「中世騎士物語」の描くようなことまで知っていたのか、であり、それを説明することを目的としている。いわば、原作の補完小説である。
 アンは子守娘としていろいろな家を転々とし、ついに子守の希望者がいなくなって孤児院に入れられてしまったのである。最後の子守をした家の傍に住んでいた女性がアンの同情者になってくれたのだが、高齢のため養母になれなかった。

 4.「マッチ売りの少女」とジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」(When Marnie Was There)
 マッチ売りの少女はおばあさんが亡くなって孤児になり、それでもマッチの火に現れるおばあさんを慕って、そのまま凍死した。
 一方、孤児になって養女になったアンナと近くの屋敷に住むマーニーは年頃が同じで友達になった。アンナはおばあさんが私を捨てて逝ってしまったとマーニーに訴えるのだが、それは仕方ないでしょうとマーニーに宥められても納得できないのだった。
 そして、マーニーの屋敷に子どもの多い一家が引っ越してきた時に、入れ替わりにマーニーはいなくなった。マーニーがアンナの祖母だったのである。

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