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2013年01月24日10:12

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時代の中で(74)  死んでしまった僕の見た夢

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 死後の世界で、幼稚園の友達が死んだザリガニを釣っている。この子もすでに死んでいるという噂があった。

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 死後の世界はキリコの「街の神秘と憂愁」に似ている。デルヴォーの街とも。

 西岡兄妹「死んでしまった僕の見た夢」パロル舎2005 は、14歳で自殺した少年が死後の世界をさまよう姿を描いた絵本である。絵本の場合、ブックオフで百円、二百円なら即買うのだが、これはどう理解すればよいのかなやましいものだった。
 同じ死を扱ったものでも、佐野洋子「百万回生きた猫」の場合は、一度だけの生を良く生きよ、とのメッセージがあった。しかし、これは少年が人気のない街を彷徨うだけのようだった。幼稚園の友達やバスの運転手で乗せてくれるすでに死んだ叔父さんも登場するのだが。
 少年は別れる時叔父さんに、この世界はいったい何ですか、、と問うのだが、
 叔父さんは「それはお前の薄い記憶であり、おまえの意志だ」
 「ぼくには意志なんてありません」
 「それがお前の意志なんだよ」と答える。
 最後の場面は、ススキの野原で向こうの光を目指して行こうとするが、動けなくなり、「これがぼくの死後の世界であるならば、ぼくは完全な無を望む。」の言葉だった。
 宮崎駿「千と千尋の神隠し」ではトンネルを通って戻ってくるのだが。これには救いがないのか。
 近いと言えば、ダンテだろうか。自殺者の地獄。作者兄妹は自殺志望者を突き放すことによって、自殺を止めようとしているのであろう。

 昔読んだヴェーデキントの戯曲「春の目覚め」では、自殺した少年が自分の首を持って現れ、自殺の誘惑に駆られる友人を連れて行こうとする。別に首を切られたわけではないのだが、そういう噂がたったのでそれに従っているというのだ。そして、生きることにした、という友人と別れ「とろとろ腐るぬくもりにあったまりながらニヤリニヤリと笑っててやろうぜ」と言いながら墓の中へ帰って行く場面で終わる。

 意志のない黄泉の国から帰って来い。これが、メッセージに違いない。
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