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2012年01月23日17:56

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映像の向こう側(10)  魂のジュリエッタ

 フェリーニ監督の「魂のジュリエッタ Giulietta degli spiriti」1966 をテレビでみた。妙な題だと思っていたが、原題の直訳らしい。この映画の前作の「8 1/2」は、フェリーニ自身の心象風景による自伝作品といわれ、映画製作に行き詰まった監督の現実と幻想の交錯が描かれた話題作であった。
 それに対して「ジュリエッタ」は、妻で女優のマシーナを描く幻想的作品という評判であったが、その時に見に行かないままで、やっと、テレビで見ることができた。気がつかなかったが、フェリーニの最初のカラー映画だったそうである。
 ストーリーは、豪邸に住む専業主婦ジュリエッタ(ジュリエッタ マシーナ)は、結婚15年目の記念日だと言うので、お祝の用意をして待っていたのだが、夫(マリオ ビスー)は、忘れていて大勢のお客を連れて帰ってくる。おまけに、寝言で女の名前を口にする。これまで、夫がすべてであったのだが、疑いと恐怖で探偵事務所に出かける。
 ジュリエッタの隣家は、さらに豪邸なのだがこれまで付き合いはなかった。たまたま、迷い込んだ猫を返しに行って、その女主人から夜の宴会に招かれる。その豪華で、奇妙でサイケ調の屋敷、ぼけた老母、精神を病んだ若い女、快楽的な男女が、こってり描かれている。「甘い生活」のように。
 同時に、ジュリエッタの少女時代が幻想的に描かれる。重要なモチーフは、小学校の演劇でジュリエッタが異端として火刑される場面である。友人が神様が迎えに来たら教えてくれと頼む。この友人は後に15歳で自殺した。演劇の時点では、教師をしていたジュリエッタの祖父が、馬鹿な劇だと、校長の制止を聞かず中止させ、自分は愛人と飛行機(初期の複葉機)を操縦して逃げてしまう。
 探偵事務所は浮気の現場の写真をわたす。ジュリエッタは相手(モデル)の屋敷にのりこむが、お嬢様は夜中になると言われて、家に戻ると夫が旅行に出かけるところであった。心は絶望しているが何事もなかったように見送り、自殺の誘惑に駆られる。自殺した友人が誘いに来るのだ。
 しかし、ジュリエッタは心理劇の手法を使い、火刑される少女を祖父でなく自分が解き放つことで、心理的に解放されるのである。
 ところで、ジュリエッタのキャラクターであるが、およそ控えめで自己主張のない、取り乱すこともなく表情もほとんど変わらない、つまり日本人によくいわれるものであった。イタリア人にもいたのかと、少し安心した。
 分からないのは、なぜフェリーニはジュリエッタを実際の女優でなく、専業主婦にしたのか、ということである。自身の映画ではちゃんと映画監督だったのに。おもうに、職業以前の、人間マシーナを描きたかったからだろうか。およそ、派手な所のない女性だということになるが、そのトラウマ、多分何かを誰でもが持っているに違いない。それを描きたかったのであろう。
 伊丹十三と宮本信子の場合を思い出すが、伊丹も自身のトラウマを描けば救われたのかもしれなかった。
 関係ないが、夫役はマルチェロ・マストロヤンニとばかり思っていた。少し変だとは気がついたのだが、ネットでキャストをみて驚いてしまった。
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