実は去年に出ていた本だが、たまたま本屋で売っていたのを発見した。
そんなに積極的に追いかけないけれど続きは読みたいし、
見つけたら買ってしまうという距離感だ。
まず、この巻で気づいたのは、思いのほか丁寧に間違いを正していることだ。
要は、ボケに対して的確なツッコミを入れているのだが、
あきれたり、ひっくり返ったりして、ほったらかすということをあまりしない。
市役所からの督促に「わたしの計算では督促はギリギリ来週あたり」という祖母には、
母は「ちょっとでも利息がつくとかアホ言わんとさっさと払う!」と母がたしなめる。
出先で雨が降り、傘を持つ手が冷たいと祖母がいうので、すかさず母が手袋を差し出し、
あわせて「だれのかしらんけど」と一言添えると
(忘れ物なら)「もどしときなはれッ」と祖母がたしなめる。
コンプライアンスというような面倒な話もあるのかもしれないが、
そもそも手数が多いというか、ツッコミのバラエティが豊富で、
間違いを正す言葉であっても、間延びしないピシッとしたツッコミになっている。
また、背景に登場するちょっとしたもののセンスの良さも見逃せない。
新しくできたコンビニの屋号が「子分親分」だったり、
朝カフェの意味ありげなメニューが「イカガナモナカ」だったり、
本ネタとは無関係なところでも感心させられる。
と思えば、1組のミヤベくんは、ときどき登場しては鮮やかな推理を見せ、
5年3組の人見さんは800メートル競走で優勝して表彰されるというような、
明らかに宛描きネタも登場する。(顔も似ている。)
(人見絹江ネタに反応するのは、1年遅れで「いだてん」後に読んだ効果だろうか。)
また、唐突に、学級新聞の記事という体裁で、
「本能寺の変が歴史上の大事件というが、もともと信長の評価が高すぎる。
尾張・美濃・伊勢・近江半国以外は自立性を認めたみなし領国だし、
調停者としての君臨するだけなら足利幕府と変わらないし、検地もしてないし、
信長は三好長慶の後ガマ程度の存在。(と明智光秀は考えていたのではないか)」
というような説をサラリと披歴されたりもする。
なにせ長期の毎日連載の4コマなので、相当に自由度が高い。
もともと普通の4コマでも、そんなところに行くかあ、という発想の豊かさに感服する。
とはいえ、自由にできるからといって、ここまで自由にできること自体が、
やはり、いしいひさいちの才能なのだろう。
こういう刺激があるから、4コマなのに愛読してしまうのだ。
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