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2016年11月28日16:02

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時代を越えて(120) 生前退位(譲位)の問題

 第4回「退位」有識者会議議事録(14日・要旨)読売新聞2016.11.25
 読売新聞に6人の有識者の発言要旨と、相互の質疑応答要旨が掲載された。なお、質問者については個人名でなく、一律に「有識者」となっている。
 有識者は6名
 A:渡部昇一(英語学、エッセイスト)、桜井よしこ(ジャーナリスト)、笠原英彦(日本政治史、皇室典範)、今谷明(日本史)・・・退位反対
 B:岩井克己(朝日新聞OB)、石原信雄(元官房副長官)・・・退位賛成

 この中で、岩井はネットによれば、朝日現役時代にオリンピック結団式に取材参加したが、唯一人、君が代斉唱の時に起立しなかったとのこと。

 さて、私個人の意見はBの岩井、石原に近い。岩井は、摂政を置くと象徴の二重性が起きると言うことで、退位を進めるのであるが、質疑応答で、前天皇でも二重になるではないかとの質問には、欧米の王室で引退した王の影響力で二重性が生じたという例はないと回答している。

 渡部の意見は、天皇の仕事は祈ることであって国民の前に姿を現す必要はない。皇室典範改正反対、特例法も駄目で、摂政を置けばよい。退位は皇室典範違反である。
 質疑応答で、象徴天皇制の下では国民との交流や活動で国民の信頼を得る必要があるのでないかと質問されたが、退位は重大な結果につながる(具体例はなかった)とにべもなかった。

 もう一人、今谷であるが、中世日本史の専門家で、天皇と時の天下人や将軍との関係を資料に基づき論じる一般書をたくさん書いていて、私はその都度愛読していた。その今谷が一番強硬で、摂政も必要ない。臨時代行で良い。現在の公務は陛下一代限りであって、公務の間口を広げ過ぎている。宮内庁が減らすべきだ、という。

 ☆海風:問題が問題だけに全員が真意を隠しているのかもしれないが、特に渡部と桜井が抽象的すぎて、理由の一端もつかめない。渡部の著書も愛読してきたのだが、鶴岡市での子ども時代に仲間と川で泳いでいた時、天皇の巡幸の車列が来るのが見えた。あわてて服を着て道路にあがり、万歳と叫んだ。小さい子の中にはふんどしがほどけて裸状態もいたという。昭和天皇は渡部の方を見て笑って手を振ってくれたというエピソードを紹介していた。
今上天皇皇后は海外での激戦地に慰霊の旅をつづけられ、さらに、大災害の被災地慰問に必ず行かれて避難先の体育館などで親身になって励まされている。このうち、慰霊の旅は昭和天皇の後を受けてのものだし、被災地慰問は戦後の全国巡幸の現代版であろう。皇居で祈っているだけでいいとは、渡部は転向したのかと疑わしくなる。
 確かに、次の天皇である皇太子夫妻は、特に妃殿下の方はとうてい慰霊も慰問も行けそうにない。被災者が励まされるのは今上より現皇后の言葉やいたわりの効果だと思えるが、次の妃殿下の方は行かない方がましなぐらいであろう。明らかに継続性がない。だからやらなくて良いというのだろうか。

 渡部以上に問題は今谷である。今谷は極端に象徴の二重性を恐れているらしい。そもそも、今谷の歴史研究によれば、将軍か関白かどちらか良い方を言ってほしいとの勅使の依頼にも応じなかった(というか本能寺の変で信長の真意は永遠に分からなくなった)ことで、天皇位が望みだったとの通説があった。今谷説では織田信長は正親町(おおぎまち)天皇に頼りきりで、危なくなれば天皇の勅令を願い出ていた。その信長が武力だけで正統性のない天皇になりたいはずはないし、そんな天皇に価値はないと考えたに違いないのである。ということで、足利義満が危ない橋を渡りかけただけで急死した以外、徳川将軍も天皇位を廃したり、貶めたりする気は全くなかったとする。江戸時代にも官位を期待して各大名は朝廷への進物を忘れることはなかった。官位は将軍が決めることになっていたのだが、朝廷の(暗黙だろうが)口添えが一言欲しかったのである。
 つまり、今谷は天皇の「権威」が、時の権力を圧倒することを恐れているのに違いない。多分、今上両陛下の努力は「権威」をさらに上げる効果(今やカリスマになっていると見ている)があって、民主政治にとって望ましくないと考えているに違いない。

 ということで、各有識者の真意は分かりづらいのだが、渡部は継続性を重視してあまり特異なことは控えてほしいようだし、今谷は民主主義の観点から天皇のカリスマ化の可能性を排除したいようである。
 しかし、昭和天皇がカリスマだったことは承知していたが、今上もそうだったとは知らなかった。皇后あってのことだとは思うが。
 それにしても愛読していた二人と意見が異なるという残念な結果だった。


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