大学教授など最高の知識人が、安倍首相や小池新都知事をヒトラーだの極右などとレッテルを貼って罵倒するなど、まるで昔の大学紛争で学生が教授を罵倒していたデジャブのような現象が起きている。あれはまあ、世間知らずの学生だったからという言い訳もできるが、教授ともあろうものが同じことをして、どんな言いわけができるのだろうか。
ツイッターをみていたら同じような疑問を持った人がいて、それへのリツイートに、「川口・マーン・恵美さんが現代ビジネスに寄稿している「シュトゥットガルト通信」を見ると、ドイツ、いやヨーロッパのリベラルはちょっとナショナリズムが入った意見を“極右”として攻撃してきた」とあった。
また、別のツイッターだが、ドイツではヒトラーに例えることは禁じられているとのことである。ドイツでは、極右だけを使用しているのだろう。
そもそも、なぜ「極右」は発生したのかを知るためにネットを探すと、ブロゴスに似た論壇ブログのシノドスに次の二つの論文があった。
�，覆璽茵璽蹈奪儚特呂廼鳳�政党が台頭するのか（要約）
--イアン・ブルマ 米バード大学教授／ジャーナリスト2008年11月03日
戦後の欧州で国家主義を表現するのはサッカー競技場では許されても、公的な場所では許されなかった。欧州統一に懐疑を抱くことは偏狭であり、人種差別主義であると非難されてきた。
こうした感情が移民に対する憤りと結び付いたのである。１９６０年代にトルコやモロッコからやってきた移民労働者の子供たちが欧州の各都市でイスラム教徒の大きな居住区を形成し始めたことで、近隣に住む労働者との間で緊張が高まってきた。だが、彼らによる犯罪と習慣の違いに不満を述べることは、リベラルなエリートによって“人種差別主義”であると批判された。人々は忍耐することを学ばなければならなかった。
忍耐、欧州統一、国家主義の否定、反人種差別主義が各国で大きな政策目標となっている。このことは必ずしも悪いことではない。しかし、議論のないまま、ましてや批判を許さない形で目標を達成しようとしたため反発を招く結果となったのだ。
☆海風：戦後のヨーロッパでは、欧州統一を理想として、かなり高圧的に統一事業が推進されたようである。一方、移民労働者の異質な文化の隣に住んで文化摩擦最前線のトラブルに巻き込まれるのは、低学歴の下層労働者たちだった。彼らの忍耐が切れて移民排斥を主張する極右政党の支持者になった、という経過のようである。
��普遍的価値の擁護者としての「極右」―― リベラリズムのアイロニー（要約）
吉田徹 / ヨーロッパ比較政治2012.04.03 Tue
もはや「ファシスト」や「ネオナチ」といった形容詞でもって極右を語るのは、ミスリーディングという以上に、間違いに近い。ヨーロッパの極右政党は、とくに9.11を以降になって、どちらかといえばアメリカの「ティーパーティ」に類似する、ポピュリスト政党として進化してきているからだ。
最近では、すでに第一党としての地位を築いたスイス人民党（UDC）の主導で、実刑判決を受けた外国人の強制送還措置やミナレット（モスクの塔）建設の是非（スイスの景観保全問題）を国民投票にかけたことに象徴されるように、一国の政策に大きな影響を与えるまでになっている。以下に、その理由を見てみよう。
ポスト9.11が重要な契機となったのは、これを機にヨーロッパ極右政党は明確なポジション・チェンジをみせたからだ。それまで色濃く引きずっていた戦前のファシズムや冷戦時代の反共イデオロギーを掲げるのではなく、むしろ西欧文明に敵対するものとして反イスラム主義を明確にしたのである。しかも、これはたんにイスラム系移民の差別ではなく、西欧的普遍主義の擁護という容を採ることになった。
具体的事例で説明してみよう。スイスや最近のフランスで問題になったものとして、ハラル（イスラムの教義に従って処理された食品などを差す総称）がある。（一般消費者に）ハラル食肉であることを表示する規定はないので、全体としては少ないシェアであるものの、ハラルが通常の食肉に混ざって流通するという事実がある。ここで、ハラル問題は、一般消費者の権利を阻害するものとして、槍玉にあげられる。
他にも、イスラムの女性が被るブルカ（スカーフ）は、女性抑圧の象徴として、あるいはイスラム圏ではいまだ一般的な「強制結婚」（家長が娘の結婚相手を一方的に決める）、少数でみられる一夫多妻などは、女性の自己決定権に対する挑戦として受け止められる。
こうした主張をする極右政党を、もはや「極右」ではなく、「ナショナル・ポピュリズム政党」と呼ぶべきだとの主張もある。
☆海風：9.11はアメリカだけの問題でなく、ヨーロッパへも波及する危機として受け止められ、これをきっかけとして「極右」政党から「ナショナル・ポピュリズム政党」に転換したというのである。
フランスの国民戦線が「極右」の創設者から娘の現実主義（政権政党になれる）に代替わりしたのも、ポピュリスト政党へのトレンドに沿っているのだろう。
それにしては、今も極右のレッテル貼りが横行しているのはどうしてか。
日本にも同様の「ヘイトスピーチ対策法」問題がある。
��ヘイトスピーチ関連訴訟で在日韓国・朝鮮人側の代理人をしている弁護士が、「『日本人を殺せ』と国内で言っても差別でない」とツイッターで発言して、大きな論議を呼んでいる。
発言したのは、京都市内に事務所がある上瀧（こうたき）浩子弁護士だ。
「日本国内で『日本人は誰でも殺せ』との内容は、日本人という優位にある集団に対するものであり、差別にはあたらないと思います。例えば、『日本人女性をレイプしろ』との内容は日本人であることについては差別とはなりませんが女性差別であると考えます」
その理由として、上瀧氏は、「日本の朝鮮半島に対する植民地支配以降、差別されてきたのは在日であり、日本人は差別する側にいたという歴史的事実に基づいております」と説明した。もっとも、「『殺せ』という発言を容認してはおりません」とは言っている。
☆海風：普通の日本人はこの弁護士の主張に納得しないと思う。
1965年の日韓基本条約での経済援助と請求権の最終的解決があった。その援助で韓江の奇跡といわれる経済成長があった。一例として、八幡製鉄の技術供与によって最新鋭の高炉を備えた浦項総合製鉄（現ポスコ）が発足し、大成功を収めたのは周知のとおりであるが、韓国人は八幡の技術供与があったことを知らされていない。
近年では、テレビドラマなど韓流の流行もあり、韓国への旅行も盛んだった。修学旅行先を韓国にしていた高校もあったと思う。古い差別感情は終わっていたのである。
それが崩れたのは韓国側に原因がある。サッカー試合での日本チームへのヘイトがあり、李明博大統領の天皇土下座要求、朴槿恵大統領の日本非難の世界行脚である。
朴大統領の主張するように千年間恨む権利があるなどと、普通の日本人が納得するわけがないのである。今起きているのは、条約も示談もゴールポストを平気で動かす韓国人への怒りであって差別ではない。もう、韓国は差別される弱い国ではないからである。「在日」とは一種の二重国籍者で、普通の日本人、特に低所得の日本人より有利な地位にある。日本国籍をとればその有利さを失うことになる。ネットでおなじみの李信恵氏が「おいらの国籍は「在日」だ」と主張する理由であろう。
☆海風：上記に引用したイアン・ブルマ氏と吉田氏は、もう「極右」も「ヒトラー」もいないというのだが、それでも日本でも欧米でも分身術で数を増やしながら妖怪のようにさ迷っているように見える。
何故なのか。思うに、世界的クォリティ新聞のせいではなかろうか。ニューヨーク・タイムズは朝日新聞本社に日本支局をおいている。両方ともリベラルであり、国際主義である。トランプやフランス国民戦線など反移民政党は両新聞から極右認定されるであろう。
ヨーロッパの主要新聞も、当然リベラルであり、欧州統合に反する者は極右認定される。なかなか「ナショナル・ポピュリズム政党」とは認めないだろうし、そもそも「ポピュリズム」というのが大衆（の反逆）に迎合しているというイメージを持っているのだと思う。
ということで、世界のリベラル新聞連合という仮説を立てれば、朝日新聞が慰安婦問題で撤回したにもかかわらず、その後元気を取り戻して、今やなかったことにしている勢いも理解できる。
新聞社リベラルは、世界的に活動するわけで、彼らの（内田樹の言う）「身体知」は国際化されている。身体知を備えた知識人である国際主義者は、近隣社会の身体知だけの下層労働者（いつでも移民に代替できる単純労働者）など相手にしないのである。この勝負どうなるのか？ 人ごとではない。
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