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2011年02月27日13:23

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小説の中の謎(70)  ぼけた老人の謎かけ

 フィリパーピアス「ハヤ号セイ川をいく」1955 は、「トムは真夜中の庭で」で有名なピアスの第1作で出世作でもある。
 内容は、少年が先祖の隠した宝のありかを、場所を示す手掛かりをもとに、友人と二人で、ハヤ号というカヌーで探す話である。少年の屋敷には、祖父に伯母の3人暮らしで、400年つづく名家であるが没落して今は祖父の年金で暮らしている。屋敷を手放さないために、是非とも先祖の宝が必要なのであった。少年の父は生まれる前に死に。母も後を追った。しかし、祖父は他のことではまともなのであるが、息子のことについてはすっかりぼけてしまい、旅行で不在なだけと思って、いつ帰るかと待ちかねている。渡さねばならないものがあると信じているのである。息子のことに関しては老人の時計は止まって、その年齢もあいまいになってしまったのである。したがって、その忘れ形見の孫のことも念頭になく、なぜいつも近所だか使用人の子だかがいるのかといぶかしんでいる始末である。
 宝のありかは、かくした400年前の先祖、祖父本人にその後の出来事、などいくつもの謎が重なって、一つ解けてもまだ底がある、というように複雑を極めていて、読み飛ばすとわからなくなる。ピアスの第1作ということで力がはいりすぎた感じがする。
 少年たちの宝さがしに伯母は反対であった。というのも、実は宝は父(少年の祖父)の手ですでに発見されていることを知っていたからである。伯母は父から聞き出そうとしたのだが、息子が帰るまで待てといわれてあきらめていたのである。それとは知らない少年たちは、祖父の跡をたどって隠し場所に近づいていく。そして、ついに、息子が帰る日が来た。祖父は少年の赤毛が夕日で金色に染まったのを見て、帰ってきた、息子が帰ったと叫び、宝を取りに行こうとしたときに、発作を起こして死ぬ。
 伯母は屋敷を売ろうとするが、少年たちはなおあきらめずに宝に接近していく。
 ・・・という、息の長い宝さがし物語である。しかし、ただ、単なる宝探しではなく、老人と孫、時間の観念など、「トム」の作者らしいところが魅力になっている。
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