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2011年02月22日21:42

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小説の中の謎(67)  のんびりした田舎町で冒険

 ロバート・マックロスキー「ゆかいなホーマーくん」1943 は、超がつくほどのんびりした、アメリカはたぶん中西部の田舎町に住む少年、ホーマーくんの日常に起きる冒険?の物語である。のんびりしているのは田舎町に住む人々であって、ホーマー君のことではない。
 第1話は、強盗団が盗んだ金を持ってホーマーの父の経営するホテル(独立した小屋からなる・・・ロッジというのだったか?)に泊まる。それに気がついたホーマーが見張っているうちに、ペットのスカンク(両親には秘密)が、小屋に入り込み金の中で寝てしまう。スカンクに恐れをなした強盗たちが動けなくなって御用となる。お手柄のスカンクは晴れて公認のペットになることができた。
 第2話は、巡回してきたスーパーマン役者のスポーツカーが帰る途中で溝に落ちたのを、馬車で引いて助ける話。
 第3話は、新しいもの好きのユリシスおじさんの食堂で、自動ドーナツ製造機が止まらなくなり、ドーナツを作り続ける話。
 第4話は、糸屑で造った糸玉の長さくらべ競技の話。ホーマーが手伝ったテレマカスおじさんと警察署長さんの対決で、勝った方がターウィリガーさんへの求婚権を獲得するとしていたのだが、女性であるにもかかわらずターウィリガーさんが男の?競技大会に参戦することを認められて・・・。
 第5話は、リップ・ヴァン・ウィンクルならぬハメルンの笛吹き騒動。付いて行った子供たちは、魔女の呼び声から逃れたユリシーズのまねをして、耳に栓をして無事に帰ってくる。
 第6話は、森にかこまれたお屋敷を再開発して、同じ規格の家の住宅団地にしたことから起きる騒動。
 同一規格大量生産のドーナツや団地から起きる騒動は、皮肉と言えば皮肉だが、それものんびりした雰囲気の中でおきて、解決するので、特に毒を感じることはない。住宅団地は平地にあるのだが、・・・ハイツと名付けられたなどと言ってはいるが。
 こののんき話が、1943年という、第2次世界大戦中に出版されたのだから驚きである。
 ところで、再読して気がついたのだが、ホーマーにユリシスにテレマカスとは何だろうか。トロイ戦争を物語った詩人ホメロスと関係があるのだろうか。大いにありそうだ。ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」は、ダブリンの平凡人の一日を描いて、古代ギリシャの英雄ユリシーズの冒険に匹敵するものとしたのである。ここでは、ホーマー君は語り手として、超のんきな田舎町の英雄たちの物語を語ったのだった。
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