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2010年12月26日13:02

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小説の中の謎(51)  人はパンのみにて生くるにあらず

 モンゴメリ「赤毛のアン」全編のモチーフは、マタイ伝「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つの言葉による」ではなかろうか。
 最初に登場するのはリンド夫人であるが、物語は心臓の悪いマシュウがマリラと相談して、農作業を手伝わせ、いずれは家を譲るために孤児の男の子を引き取る決心をしたことから動き出したのである。その動機は経済的理由、すなわちパンのためであった。
 ところが、アンのおしゃべりに聴きほれたマシュウは、突如それまでの計画を反故にしてアンを引き取ることにし、彼の体を心配するマリラの反対にも耳を貸さなかった。
 やむをえずマリラはアンに宗教教育を始めるが、アンは巻頭におかれたブラウニングの「あなたは良き星のもとに生まれ 精と火と露より創られた」子であった。アンのおしゃべりは、実に、神の作ったこの世をたたえる言葉であったのだ。マリラは、アンがマシュウに魔法をかけたと気をもんだが、魔法にかけたのはプリンスエドワード島そのものであった。
 マリラの心配した通り、マシュウは心臓発作で急死するのであるが、物語の最終行は、ブラウニング「神は天にあり、この世はすべてよし」でしめくくられる。
 マシュウとはマタイの英語読みである。
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