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2023年07月19日08:48

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浮世の謎(124) ホラー物語

 1枚目 御嶽山神社本殿
 2枚目 大口真神神社   ネットから

 今は昔で、もう大分前になるが、ホラー映画が流行ったことがある。その始まりが、
スティーブン・キング「シャイニング」だった。一家が細い山道を登って行って、ついたところが大きな庭園のある屋敷で、怪奇現象が続発し、作家の父親が狂って斧をもって家族を追いかけまわした。陽性のホラーだったと言える。

 陰気なホラーは「オーメン」シリーズ。怪しい犬に何かささやかれた赤ん坊の時から少年になるまで、親や神父などに突然死をもたらすので、そのたびに驚かされた。
神父が悪霊退治をするのだが、逆に不可解な死を遂げる。キリスト教でも心底では万能の神としてキリストを疑っているのだろう。 

 日本では犬と言えば忠犬ハチ公なのだが、欧米では犬が悪魔の使いになるのだろうか? 
メーテルリンク「青い鳥」では、犬は兄妹の忠犬で、猫の方が怪しい動きを見せていたのだが。日本では主人の復讐のために化け猫になる場合がある。

 上田秋成「雨月物語」
 溝口健二の映画版1963によれば、戦争を生き延びて故郷に帰ってはきたが、待っていた女房は? という怪談だった。

 明治になっての怪談と言えば、小泉八雲「怪談」だろう。「耳なし芳一」など、子供のころラジオで聞いていて震えあがった。むろん、背景として平家の悲劇があるわけで、映画版「雨月物語」と同じ構造になる。
 そういえば、子供のころ年の離れた兄に映画「リチャード3世」に連れて行ってもらったのは良いが、だんだん話が怪しくなって、最後の場面で震えあがった。中学生になって4大悲劇を読んだが、幽霊が出るのを悲劇というのかと納得した。

 近年の日本ホラーの最高傑作は浅田次郎「神座す山の物語」に違いない。浅田自身や母方の伯母から聞いた話とされていて、似たものとしてはセルマ・ラーゲルレーヴの一族の物語「モールバッカ」がある。それまでは「ニールスの不思議な旅」の作者として知っていただけだったが、彼女の一族と故郷にまつわる超現実・怪異話である。
 浅田の母の実家は青梅市の御嶽山(929メートル)山頂にあるの御嶽神社の神職(参拝客のための宿を経営する御師)だったが、朝早い電話に出た母が、「山の伯父さんが死んだ」と叫んで、御嶽山頂の神社に向かった。しかし、少年だった作者はすでに知っていたのである。深夜に伯父が彼を訪ねてきたので。 
 御師だった伯父の親族は各地に散らばっているが、夏休みの祭りの時には全部集まってくる。伯母が少年たちの寝物語に先祖にまつわるホラー話をするので、それを集めたのが「神座す山の物語」だと思う。
 むろん彼が山で出会った怪異も入っている。それは、夜に神社の傍で親しくなった少年のことだが、従兄弟の一人とばかり思っていたのがいつの間にかいなくなったので、大広間の従兄弟たちの所へ戻った。伯母にその話をすると彼女の顔色が変わったとのことだった。

 この御嶽神社には神の眷属として大口真神(おおくちまがみ お犬様・狼)が祀られている。秩父の三峰神社も同じで、私はその近くまで行ったのだが、今から思えば惜しいことをしたが神社にまで足を延ばさなかった。
 なお、浅田の本には、少年の時に神社の傍で大きな白犬が走って来るのを見ている。伯父に犬の話をしたら驚いていたとのこと。

 ということで、ホラー物語は、私のように信仰心のない者にも、日常の現実を超える超常現象への恐れを思い知らせるのである。

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