読売新聞2023年６月22日 ３月３日老衰で死去88歳
追悼抄 特別編
新聞１面のの半面を使って、大江の業績を称賛している。
私も若い頃から大江の小説をほとんど読んできたので、これをネタにして大江への最後のあいさつ・追悼にしたい。否定的なものになったが、大江が日本を否定しているので仕方がない。
�．献隋璽�が好きだった
林屋三平のマネして「ノーベル賞をもらって、どうもすみません」と言いたくなると語る
など。
★ノーベル賞受賞者に慣例になっている文化勲章は拒否している。その時、新聞記者からサルトルはノーベル賞を拒否したのに、大江さんはなぜ文化勲章だけなんですかと問われている。返事はしなかったと思うが、妥協の結果だと思う。精神障害の息子を抱える中で生活費がかさむだろうし、国際的に威力や利益の上がるからだろう。
��突然絶交を言い渡すことがあった
安部公房や安岡章太郎など、大江が敬愛していた作家だったのだが。大江の方から絶交した。
★安倍公房は、大江を評価していない花田清輝と親しかったからだろう。安岡に対しては、「アメリカ感情旅行」に批判精神がないとか？
大江は一時の感情で決めてしまうのだろう。
➂ノーベル賞受賞演説「あいまいな日本の私」1994年
川端康成の受賞講演「美しい日本の私」への皮肉だと思われる。川端は日本の伝統的な美意識を評価し肯定しているわけだが、大江にとっての日本（太平洋戦争をした日本、天皇のいる日本）は美しくないわけで。天皇から渡される文化勲章をもらうわけにはいかない。
��20世紀がテクノロジーと交通の怪物的な発展による被害
それを、ひ弱い私みずから鈍痛でうけとめたい（一般民衆に被害を及ぶさないようにしたい）。
特に世界の周縁（日本の四国の山村）にある者として、そこから展望しうる人類全体の癒しと和解に貢献できるか探りたい。
★大江の山村、つまり内子町だが、そこは、（きだみのる）のいう「村落共同体」だったはずだが、大江は村落共同体を否定し、内子町に大江記念館（過疎化する町の客寄せにしたいわけだが）も建てさせない。具体的なことを何もせず、大きな理想を公言するのは美的ではない。
�ス長饐�年だったが、占領下の日本人の屈辱を書き、痛みを抱えた旗手だった。
★本来の目的は大英帝国の植民地解放だった。その理想を当時の新聞記者たちも支持したし、小説家たちもそうだった。
しかし、敗戦後にGHQが日本軍の残虐を宣伝し、理想の９条平和憲法を与えてくれた。で、大江をはじめ、知識人の多くも転向したわけだ。むろん、川端康成の価値観は戦前のままで転向していない。その面では、川端はあいまいではなく、筋の読み取りにくい小説を書く大江の方があいまいだと言わざるを得ない。
��新しい作品を書くことによって書き直すという形で走り続けて来た
★芥川など書けなくなったと言って自死したが、自分は同じ主題やストリーを何度も使って、しかし引用する古典小説（ダンテなど）を変えることで、書き続けたとのこと。
それを自己模倣というのだが。他作家の模倣は無論だが、自己模倣もダメなのである。
�А巖�石や司馬遼太郎さんは国民作家だったが、僕はそうでない」
★むろんその通りだが、自覚していたわけだ。
漱石や司馬は日本批判もあったが、根本的には肯定し、司馬の場合歴史的にも肯定した。
天皇の存在を許せないと常に意識しているようでは、国民作家になれるはずもない。
�┥�説の中で、主人公（大江のような作家である）の父を終戦時に、終戦に反対して小舟で海へ出撃して水死させている。何度かこのモチーフを使って、最後に「水死」という小説にした。
確かに、大江の父は終戦の前後に死んだとのことだが、むろん病死だったし、「水死」小説の中で、主人公の母が怒っているとの記述があった。これは本当のことだろう。
別の所で、大江は父というものは天皇制だと言っている。となると大江も父なので天皇だとなるが、これでは自分の尻尾を呑む蛇のウロボロスになってしまう。
ということで、最後に結論を言えば、大江の論理は飛躍を重ね、イメージを重ね、難解というより不可解というべきだろう。まあ、難解な比喩を多用した象徴詩と言えるかもしれないが。
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