１枚目 サルディニア王国とガリバルディによるイタリア統一戦争
2枚目 サリーナ公爵（バート・ランカスター）、後ろの絵は死にゆく人を描いたもの。。
３枚目 公爵の甥の伯爵タンクレディ（アラン・ドロン）とブルジョアでパレルモ市長の娘（クラウディア・カルディナーレ）
映画の原作は貴族のジュゼッペ・ランペドゥーサ（1896−1957）の小説で、イタリア統一戦争を背景として、作者の先祖のランペドゥーサ公爵（シチリア）をモデルにした小説。
監督のヴィスコンティ（本名ルキノ・ヴィスコンティ・ディ・モドローネ）（1906−1976）自身がミラノのモドローネ公爵の第４子であり、自身は伯爵とのことで、この映画は監督自身の内面を描いたものでもあるとされている。
あらすじ。ガリバルディ軍のシチリア侵攻による内戦開始（1860年）を背景として、シチリアの名門ながら没落の予感に悩ませられながらも、新興ブルジョアの市長の財産をあてにして、甥の伯爵と市長の娘との結婚を許す。
伯爵はガリバルディ軍に参加して革命をめざしていた。公爵は止めようとするのだが、変わらなければ守れないんだ、と振り切って戦闘に参加する。
ところが公爵の城に帰って来た伯爵はガリバルディの赤シャツでなく国王軍の軍服を着ていた。不審に思った公爵に、ガリバルディが軍を解散したので所属を変えたまでだと、悪びれもせず説明したのである。
映画の画面は大画面が多くて、戦闘や舞踏会の場面が延々と続く。確かに画面はきれいだし、大勢の役者を動かすのは大変だろうなと思いながらも、まだやってるのかと思った次第である。
で、印象に残った場面である。順不同で。
�”馥Р颪�終わるころだが、疲れた公爵がホールから離れて休んでいる時にふと脇の小部屋に視線を向ける。そこには大きな花瓶のようなものがびっしり置いてあった。説明はなかったのだが、これは多分尿瓶だろう。たくさんの客が一晩中滞在しているのだから。
��公爵を貴族院議員に推挙したいと使者がやって来るのだが、彼は、立派な城が高いところにあるけれども、途中までの道は荒れてますね、とパレルモの印象を述べる。馬車は麓までしか行けないので、後は狭い道を歩いて登るのである。
公爵は、確かにそうです。その理由は言いたくないが・・・というように答えた。日本の城もそうだが防衛のためだったのかもしれない。
��パレルモの市長はイタリア統一に賛成するか反対するかの住民投票を実施する。投票権のあるのは税金とか身分とかの制限があるのだろう、百数十人だったと思う。結果は全員賛成だった。めでたくシチリアも統一イタリアに参加することになったのである。
翌日、従僕と狩りに出た公爵は、君はどっちに投票したのかと質問した。従僕は市長が言ったじゃないですか、それに公爵も統一の方へと指示なさいました。と答えるのだが、いやそれでも、どっちにしたか言ってくれと問いかける。
とうとう従僕は叫ぶように言う。身分のない私が教育を受けられたのは、〇〇王様のお陰でした。それで公爵邸での仕事も貰いました。私は恩知らずではありません。反対に投票しました。あの市長のクソ野郎め。と本音を吐いた。つまり、日本の明治維新と同じで統一すると、独立した○○王領などがなくなるので、忠義者には耐えられなかったのである。
�ぞ紊里茲Δ暴硝佑�ら本音を聞きだしたり、公爵もバカ殿ではなかった。さらに、公爵はパレルモ市長のことを尋ねる。従僕は良く知っていて、大金持ちで、さらに土地を買い集めている。奥さんは人目には出さないが、大変な美人。油断ならない男ですと言う。
それを聞いて、公爵は甥の伯爵に市長の娘との結婚を許すのである。というのは、伯爵家も名門ではあるが先代が蕩尽してしまった。甥は野心家なので金が要る。自分の娘も甥（二人は幼馴染だった）と結婚したがっているようだが、７人の子供たちに平等に相続させるといくらにもならない、という判断だった。チェーホフの「桜の園」である。日本でいえば、谷崎潤一郎「細雪」もそうだろう。アメリカは「風と共に去りぬ」など。
�Ω�爵は市長を呼び出して、君の娘を自分の甥にくれないかと頼む。甥の伯爵家は先代が金を使ってしまったが、私の公爵家と同じぐらい古い家系なんだと売るこむと、市長はしばらくモノを言わなかったが（多分持参金の勘定をしていたのだろう）、有難いことです。私の家も○○王の頃からの家系ですと言いながら、娘には大農場を渡します。持参金は○○、それから・・・と。言うのをそのままにして、公爵は急用があるのでと出て行ってしまう。
友人には、甥の結婚する市長の家はもうしばらくすると古くなるんだそうな、などと囁くのである。いささかの意趣返しなのだろう。
�ヂ衞召陵獲茲世�、公爵が述懐する「「獅子と山猫」の時代は去った。これからは「ジャッカルと羊」の時代だ」による。だから彼は貴族院議員の推薦を受けなかった。もう自分の出る幕ではないし、ジャッカルと一緒にはやっていけないと感じていたのだ。
アラン・ドロンもカルディナーレも若い。
ウィキによれば、ヴィスコンティはこの映画まではネオ・リアリズム系の映画を撮っていたとのこと。第一作の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」1942年 はテレビで見た。後は「山猫」の前の「若者のすべて」1960年 だが、これは面白くなかった。「異邦人」1967年 はカミュ未亡人から原作を一切変えないことを条件にされたとかで、主役のマストロヤンニが30歳の設定なのに年を取りすぎているしで、期待して映画館へ行ったように覚えているが、まるで死んだような画面にがっかりだった。
この映画は長いのには閉口したが、明治維新を思わせるようで興味深く反芻できた。
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