昨日は暖かくもう桜も最後だろうと、桜川の堤へ行ってみた。この桜の花の間からの筑波山を写そうと思っていたのだが、残念ながらかすんでいて、山は無理だった。しかし、桜は満開であった。
この川の上流の岩瀬市に磯部稲村神社がある。ここも桜の名所とのことだが、そのはずで、世阿弥の謡曲「桜川」の舞台になっている。日向の国で人買いに売られた少年が、仏のはからいにより、狂女となって探し求める母と、ここ常陸の磯部寺で再会する、というストーリーとのこと。豪華にしてはかない桜は、心に深い情念を沈めた狂女を連想させたに違いない。
・・・それにしても九州から関東まで舞台が広い。平安時代には国司たちが全国を渡り歩いていたし、その使用人たちもついて行ったわけで、意外に交通が広がっていたに違いない。
もとへ、「岸壁の母」も、長男と二男を戦死させて狂った相田みつをの母も満開の桜が似合う。
今朝は一転して、しとしと冷たい雨になった。灰色の景色の中で桜が明るく浮き出ている。
そういえば、先日のテレビでアメリカ人の旅行家のエリザ・シドモアを紹介する番組があった。ポトマック河畔の桜が日本から贈られ、かわりにアメリカからハナミズキが来た、という話は知っていた。話はさらに奥があって、シドモア女史が明治時代の日本で桜に、特に向島の花見に魅せられ、アメリカにも向島をと、ポトマック公園当局に20年も働き掛け、遂に友人であったタフト大統領夫人をうごかして実現したものだったのだそうである。
この時代、女性の旅行家も結構いたようである。イサベラ・バードしか知らなかったが、「あしながおじさん」のジーン・ウェブスターもそうだったというし。
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