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2007年12月24日13:27

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よしながふみ「大奥」3巻を読む

「男女逆転大奥」の第3巻である。
大奥だけではなく、日本が丸ごとでジェンダーの逆転に向かう様が丁寧に描かれる。

1641年のオランダ商館の出島移転、1643年の田畑永代売買禁止令、
無嗣断絶による大名の改易という政治の問題から、果ては、女性の髷の流行までも、
男性の減少、働き手としての女性の台頭という文脈で描いてしまう。見事だ。

それにしても、大飢饉の折に江戸の町をお忍びで歩いた家光の言葉として、
「前見た時より、また女が多くなった」「なぜ若い男が誰も働いておらんのじゃ」とあるのは、
フィクションとしての大奥の世界を通り抜けて、現在の日本を思わせる。

米俵を積んだ荷車を女たちが引くのを見て家光が述懐した
「農村から流れてきた物乞いも多いが、江戸の町は思ったより活気がある。」は、
東京だけが繁栄している地域格差の実態を皮肉っているのではとさえ見える。

それはそれとして、「大奥」を描くために描かれている大奥の外の物語が、
この奇想天外な設定に重みや深みというものを与えてくれている。
社会の意識は、変えようとして変わるものではないけれど、
変わっていくときは、こんな風にして変わっていくものなのだ。

そんな壮大な思考実験であるにもかかわらず、依然として「大奥」は愛の物語でもある。
見事だ。
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