テレビの視聴人口と比べれば、
100万部でベストセラーといっている出版業界は小さい。
「趣味は読書」と言っているだけで「少数民族」であり、
にもかかわらず、ビジネス書・ミステリ・ファンタジー・歴史小説という
偏食型読者が多い読者界は多民族社会でもある。
しかも、読書業界の中ではベストセラー蔑視の傾向がある。
ナナメ読みした書評とタイトルの印象から、
「どうせ、こんな本だろう」とたかをくくってダメだといってしまう。
つまり、ベストセラーはたくさん読まれているはずなのに、
「趣味は読書」の人たちはベストセラーを意外と読んでいない。
「だから、私が代わって読んでやろう」というわけだ。
心意気やよしである。
古老が語るありがたい人生訓は、何時の時代も熟年層をひきつける。
孤立無縁なお父さんは、たとえご都合主義でも物語で癒されたい。
雑誌連載を単行本にまとめるにあたって、斎藤はそんな真理を発見する。
ベストセラーにはベストセラーなりの理由がある。
なるほど。
ただし、毒が過ぎた文章もある。
こんな本を読む人の気がしれないというように最初から怒っていては、
ベストセラーを読まず嫌いしているのとあまり変わらなくなってしまう。
お仕事として読んでいるのだから、怒りたくなる本もあるのだろう。
とはいうものの、まずは「斎藤さん、読んでくれてありがとう」と言いたい。
ここで取り上げられている本は一冊も読んでいなかったのだが、
おかげで、どの本も読まなくてよかったことがよくわかった。
いや、もちろん、こんな本なら読んでみたいという人が、
いても良いわけなのではあるが。
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