約十年ぶりに、吉田秋生が湘南に帰ってきた。
もう、ティーンエイジャーを描くのが辛くなったのか、
主人公は大人である20代の三人姉妹だ。
14歳の義妹も出てくるのだが、作者の目線は彼女の中に入ることなく、
あくまで大人の側から慈しむように見つめている。
「子供であることを奪われた子供ほど哀しいものはありません」
大人の視線で子供を語ろうとすると、つい本音が出てしまうようだ。
考えてみれば、これまで吉田秋生が描いてきたティーンエイジャーたちは、
みんな何らかの事情で「子供であることを奪われていた」子供たちだった。
その「哀しさ」とともにある「輝き」をまっすぐに描くのではなく、
それをいとおしく見つめる大人の立場で描こうとしているのが、
腰巻に「新境地」とあるゆえんなのだろう。
「ラヴァーズ・キス」から12年、
「河よりも長くゆるやかに」から20年以上の歳月を経て、
吉田秋生はどんな日常を見せてくれるのだろうか。
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