ファンタジーの基本は、「なんでもあり」である。
「なんでもあり」だからといっても、本当に「なんでもあり」なら、
物語として破綻してしまう。
「なんでもあり」とは文法がないことを指すのではなく、
その作品に限って成立する独得の文法(というか世界観)を使って、
世界を再構築することなのである。
須藤真澄の庭先案内は、16ページの作品10本を集めた短編集である。
つまり、この本一冊で10種類の世界観があり、
その世界観を逸脱しない範囲で「なんでもあり」な物語が展開される。
思い出したように登場する「幻灯機屋のじいさん」(顔が「非」)も健在だ。
つまるところ何かがあるというような話ではないが、
その「何もない」世界を創造するために必要だったものが、
なんとも心地よく豊かな気持ちにさせてくれる。
ある意味、ぜいたくな作品だ。
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