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2022年01月17日15:47

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鎌倉殿の13人第2回「佐殿の腹」を見る

強い伊東に迫られ弱小の北条はどうなると思っていたところに、
もっと強い大庭が登場する昔のヤクザ映画か少年漫画かという展開です。
しかし、こんなウヤムヤな解決で大丈夫かと心配していたのですが杞憂で、
国を背負っている清盛は、頼朝をめぐる東国の小競り合いなど相手にしていません。

さらに、エラそうな(というか伊豆権守なので本当にエラい)堤信遠まで登場して、
わざわざ義時に嫌がらせをしないと気が済まないというほどに、
たまたま転がり込んできた頼朝は、
庇護するだけで他から警戒されてしまうような突き抜けた権威を持っています。

しかし、頼朝はいまだ何者でもないばかりか明確に時の政権に反逆した罪人であり、
乳母まで務めた比企家でさえ表立って支援することをためらい、
乳兄弟の山内首藤経俊に至っては、さっきまで平気で矢を射かけていながら、
顔が見えた途端、しれっと臣従ぶりを見せつけてきます。

そんな無力かつ聖なる存在ゆえ、頼朝は誰にも本心を明かすことができず、
食事にしても、口頭では「好き嫌いを言える立場ではない」と言いつつ、
従者には「お心」を伝えておくよう指示「する/しなければならない」ような、
きっと頼朝本人も持て余しているであろうほど、厄介で面倒な存在です。

そんな中、頼朝に平気で「出て行ってください」と言う義時は異色だったのでしょう。
頼朝を恐れたりおもねったりしないので、言葉に嘘がありません。
頼朝の腹ははっきりしました。
しかし、それはたくさんの血が流れる選択です。

一方、「粗野で意地っ張りで、すぐいきりたつ」坂東武者たちの戦いの一方で、
女たちも、命懸けの戦いをしています。
八重は千鶴丸に会いたい一心で、他は「父上にお任せいたします」としかいいません。
「会えなければ死ぬ」を本気と見て取って、祐親も嘘でごまかすしかありません。

八重が頼朝に会いたいと望んだ時も、なかば死に場所を求めていたのでしょう。
義時の薄っぺらい嘘が許せないのもわかります。
そんな八重の悲劇も使って口説いてくる頼朝はいかにも戦略的なのですが、
政子は、それでも頼朝の「身内」になる覚悟を決めたようです。

八重と政子の対面はよく出来ていました。
後の行状と気の強さを考えるなら、政子が奪い取る気満々という見立てもありましたが、
むしろ、政子は八重の承認なく頼朝とは一緒になれないという思いから、
どんな罵倒も一身に受けるつもりで対面したように見えました。

逆にねぎらいの言葉をかけて政子を驚かせた八重ですが、
それでも「寝汗」という生々しい言葉でマウントしつつ、引き継ぎモードになります。
あきらめとともに、姫君と下働きくらい違う服装で明確な身分や力関係の差が、
八重の気持ちを落ち着かせたのかもしれません。

というわけで、今回の秀逸は、
なんの思惑かオープニングからこぼれ落ちたスタッフの名が、
ドーンと「鎌倉殿の13人」のタイトルが出た後で、
ドラマを妨害するようにどんどんクレジットされることへの違和感でも、

頼朝の乳母だったとはいえ、いささか情けない比企能員を圧倒するばかりか、
比企家を代表して中央に比企尼が座り、能員と妻を従えていたことでも示される、
当時の女たちの政治的関与の強さでも、
ああ見えて、比企能員が13人の一人であることでもなく、

義時と頼朝の関係性を語るだけなら必要なシーンではなかったにもかかわらず、
当時の頼朝の置かれた状況や坂東武者たちの気分を描写するためにあえて置かれた
義時の親友であり、策士の三浦義村がポロッといった
「首、刎ねちまえよ」で広がる物語の奥行き。
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