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2019年09月06日16:39

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「将棋の渡辺くん」4巻を読む

プロ棋士・渡辺三冠の日常を妻の目線で描いた「将棋の渡辺くん」の4巻である。

別冊少年マガジンの2017年12月号から19年2月号に掲載されているので、
第30期竜王戦で竜王を失冠し、羽生新竜王が永世七冠を獲得した場面が描かれている。
 
永世七冠とは全タイトル(当時)の永世称号を獲得するという前人未到の偉業であり、
報道陣の数も多く、タイトル戦敗者の「屈辱」としてしばしば語られる
「カメラのフラッシュを背中から浴びる」(勝者を撮影するため)の歴史的なものを
渡辺三冠は身をもって体験することとなった。

しかも、この年は順位戦でもA級から陥落するなど、渡辺三冠は例年になく成績が悪く、
「今の自分には これが精一杯だった」
「来年巻き返せなければ このままズルズルと下がっていくんだな」 と、
このマンガには似つかわしくないような当時の深刻な心境が、率直につづられている。

「君は将棋に「調子」は関係ないって普段から言っているよね?」
「(関係)ない。実力。流行の戦法を取り入れようとして失敗した。
 自分の棋風に合わなかった」
普段から渡辺の生の言葉を知っているインタビュアー伊奈めぐみは、鋭く切り込む。
あるいは、心境を整理していく。

「三冠」の現在の肩書が示す通り、渡辺三冠は2019年9月現在、棋界の第一人者である。
そんな渡辺三冠をしても、当時はそんな心境だったのかと驚かされる。

「ブログに書いてあった「カメラが肩に乗る」ってどういう感じ? 比喩?」
「実際にカメラが方に乗ってた
 なんなら席譲ろうかと思ったよ ここどうぞって」(敗者の席は、勝者の正面だ。)
むしろ、この心境に至ったからこそ改めて奮起して、
現在の三冠に至ったというべきなのかもしれない。

こうした貴重な声を記録してくれているので、
景品用のぬいぐるみをラッピングすると息苦しそうと他のぬいぐるみが訴えるとか、
シュタイフ社製のピカチュウはドイツ出身で顔つきが違うので喋り方も違うとか、
将棋よりも(偶発的要素のある)競馬の方が難しいと言っているとか、
競馬でいくら負けているかについてはけっして言えないとかの、
余談については許せてしまうというか、どうでもよくなってくるのだった。

ただし、戸辺七段の父で日本一の無農薬米を生産している戸辺父
(のワガママにとことん付き合っている戸辺母)は、本当にスゴイと思ったのだけれど。
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