1.西部氏の保守主義は反語と漸進主義
・彼の「保守主義」は反語であり、思想としての中身がないのだ。
・彼の保守主義は、伝統や慣習にもとづく漸進的改良のみを認め、フランス革命のような大変化を否定したバークの思想だった。
2.ポジティヴな内容がない
・保守すべき伝統とは何か。「国柄」を大事にせよというが、江戸時代に国家はあったのか。
・「民主主義は悪だ」というが、それよりましな統治形態とは何か。
・「対米従属」を批判するが、日米同盟以外に国を守る方法があるのか。
3.英国流でいいのか
・保守主義は現状維持だから快適だが、部分最適化を続けていると英国病のような「ゆるやかな衰退」を避けることができない。それがいま日本の陥っている罠である。これを打開するには全体最適化が必要だが、彼は改革を全面否定して袋小路に入ってしまった。
4.別れの言葉
・要するに西部氏は、アメリカ的モダニズムを批判するが対案の出せない「右の万年野党」だったのだ。
☆海風:
池田さんの西部批判は簡にして要を得ている。
で、若干の疑問点である。
1.漸進主義と経済学の部分最適化は同じ行為で同じ結果を生むものなのか?
まるで、フランス革命が全体最適化であるように言っているが、あの混乱が収まるまでにずいぶん時間がかかり寄り道をしたように記憶しているのだが。
確かに一旦壊したのだが、「何事も学ばず、何事も忘れぬ」貴族が戻ってきたと言われているのだが、まあ、ナポレオンも3世のほうもそれなりの業績を上げたわけですが。
むしろ、イギリスの衰退は部分最適化を連続して起こせなかったことにある、ということじゃあないでしょうか。
2.ポジティヴな保守主義とは?
柳田国男が、日本の伝統と言われるものは昔からのものではない、と言っていました。うろ覚えですが、「今は綿の服を着るが、せいぜい江戸中期からで、それまでは麻だった。しかし麻はきれいに染めるのが難しかった。綿が現れた時にその美しい模様に驚き喜んだのである。しかし綿の欠点は肌がむれて皮膚病の原因にもなることだった」、との内容です。
当初私は誤解していたようなのですが、柳田は伝統はない、と言っているのかと思ったのです。しかし、考えてみれば、これが池田さんの言う漸進主義であって、部分最適化の連続状態だったと思えてきました。
日本もまた漸進主義だったのでないか、それに対してアメリカは全体最適化を目指したのでしょう。アメリカの企業や産業の発展史を見れば、そのダイナミックな姿に圧倒されます。
しかし、アメリカもまた、今、置き去りにされた地域、産業、労働者のための部分最適化を目指しているように見えます。トランプさんがどこまでできるか、分かるのは先のことですが。
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