時代を越えて（158）　小池都知事の「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文」拒否から波及したツイッターのバトル・・・思いもよらないキャラクターと彼の切り口

　暇に任せて、ツイッターを覗いていたら（書き込めないが、読むのは自由らしい）、どこをどう辿ったのか、赤旗政治記者‏ の「《関東大震災の朝鮮人虐殺　小池知事が追悼文断る》東京新聞」というツイートにたどり着いた。
　そこに「そば屋」さんが「朝鮮人が、井戸に毒を投げ込み日本人を殺そうとしたデマが飛びましたからね。虐殺は当然です。終わった事を蒸し返しても意味はない。」というリツイートをしていた。その後が大炎上になっていたのである。ここでは、かいつまんで紹介する。
　
　１．自衛行為の行きすぎの件
　反論：デマが飛んだから虐殺OK？ 通報した。
　そもそも流言そのものがヘイトデマでそれに乗って虐殺が行われたんだから、虐殺された人数が問題の根源ではなくて、その凄惨な史実に反省と追悼の意を示すことは当然。過去の間違いを容認することは間違ってるし、同じことを繰り返す土壌を作ることになる。
　そば：朝鮮人が日本人を虐殺しようとした。それに対し、日本人が自衛した。 結果はデマだった。事件関係者は処分された。それで終わり。 日本は韓国に、竹島で虐殺された対馬漁民（李承晩大統領による竹島占領の時）を追悼しろなんて騒ぎませんよ？
　☆海風：「反論」は、流言に従って殺したこと自体が問題で、その史実を反省しなければならないとするのに対して、「そば」は、繰り返して、その時点では本当に襲撃され毒物をまかれると信じて自衛した。そう信じる根拠もあった。やむをえないことだったとしている。
　なお、反論は全部違う人のものである。

　２．南北朝鮮への優遇措置の件
　反：今までやってた追悼文を、あえて今年からやらないのは、それ自体、東京都の意思表示になる、ということについては、どう思われますか？
　そば：自分的には、今まで朝鮮人を優遇してきた歴代知事に違和感を覚えますな。都民差別だった。私は共産主義者なので、朝鮮人だけ優遇するのはおかしいと思ってるだけです。
　中には朝鮮嫌いもいるでしょう。朝鮮人の中に日本人嫌いがいるのと同じでね。私は平等主義者なので双方の立場で考えます。あなた方差別者と違ってね。
　☆海風：「そば」は、在日特権とよばれる優遇措置を意識しているのだと思う。

　３．虐殺事件の背景
　そば：それに、当時の人権を、今の尺度で測る事は野蛮な行為だと思います。
　（流言が本当で）虐殺されたかもしれない日本人の人権は無視ですか。なお野蛮ですな。
　殺した方も理由があったはず。殺された方も理由があったはず。どちらか一方を悪者と決めつけません。差別者じゃないですから。

　正しい心を持つ普通の朝鮮人だけだったら、虐殺は起こらなかったでしょうね。 朝鮮人が、当時いかに悪く思われていたか？です。 反対に、同じ植民地であった台湾人に対しては、日本人はこんな感情は持っていない。 この差を考えてみるといいです。
　目をつぶっているのは、いつまでも蒸し返す方だと思います。現在の日本と韓国・北朝鮮との差が、それを現しています。
　☆海風：朝鮮を併合したとき、総督府の官僚になった人が、台湾と違って、朝鮮は文化の水準が高い。日本以上かもしれない。日本が植民地にしてよいのか心配になった、と回想していたのを読んだことがある。
　その高い文化とは儒教文化で科学技術や法に基づく文化でなかったのが問題で、今もなお法治でなく徳治（人治）に尾を引いているようである。

　４．蒸し返しの根拠
　反：適度に蒸し返しておかないとなかった事にしてまたぞろ同じ失態を繰り返すのが人の性。「デマに踊らされたんだから仕方ない」とか言い出す馬鹿者まで出てくるのだから尚の事。
　100年経とうと200年経とうと、言い訳が真実になる事はない。「日本人は恐怖と絶望に捉われるとそこから逃げるために手近の"叩ける奴"を理由をつけて叩く」。レッテルを剥がしたいなら言い訳ではなくレッテルとは違う事を身をもって証明するしかない。君は失敗例だ。
　そば：それは、罪のない人に罪を押し付ける行為です。今の日本では冤罪は許されませんよ。
　☆海風：中国人は「南京大虐殺」、「百人切り」、韓国人は「関東大震災」や「慰安婦」など、いずれも根拠の乏しい（あるいは、証拠となる資料を踏み越えて）事例や数字で日本を糾弾している。自分たちのやった日本民間人虐殺（降伏・引き上げ時に顕著だった）は、侵略者だから当然の罰とする。おそらく、「そば」はこれらのことを念頭に置いているのだと思われる。

　５．共産主義者にも愛郷心があること
　反：共産党支持者でこんな人がいるとは・・・唖然。社会主義者や共産主義者も虐殺されたのですよ。
　反：「デマがあったから虐殺は当然」という主張は赤旗読者達の中では通用するものなの？
　そば：共産党・宮本顕治はスパイの疑いで党員を虐殺していますからね。
　反：あなたの店が毒を盛っていると噂されたら、それで殺されたらどうするのか。
　そば：それはないでしょうね。逆に「あそこがそんな事するわけない」と笑われるだけです。ただ当時「朝鮮人ならやりかねない」という風潮があったようです。だから事件が起きました。
　☆海風：この言葉は、「そば」が近隣社会に定着している人だと、孤立せず、根無し草でもないことを示している。党員になっているかどうかは分からないが、共産主義者でも、神社の祭りにも参加して神輿を担ぐような人に見える。私（海風）よりよほど地域に根付いているようにみえる。

　☆海風：まとめ
　共産主義はインターナショナルで、国際派リベラルはコスモポリタンで、いずれも自分の生まれた国への帰属意識が薄い、と思えたのだが、どうやらそれは決めつけだったようである。
　ここに問題提起した「そば屋」さんは、郷土と日本への帰属意識が高い一方で、インターナショナルだという。確かに、本人は朝鮮人も日本人も平等に扱うと言ってはいるが、それでも「日本人はあんなことはしない」と心の底で思っているらしい。
　山本七平の言っていた「共産主義日本派」に違いない。
　「そば屋」さんのアカウントでは、店のメニューの紹介、他の店のリツイートなどそば関係が多いのだが、それ以外は、共産党幹部の動静や発言のリツイートが多くを占めている。ただ、群馬県なので、自民党の山本一太議員のリツイートも定期的に入っている。共産党以外では山本議員だけのようだが。
　ということでは、今回のような、在日やしばき隊を刺激するような発言は初めてだったのかもしれないが。有田議員の弟も、共産主義者の言葉とは思えないとツイートしていた。本当にしばき隊（マイノリティ急進派）が訪問？　するかもしれないのだが。

　で、このツイートで感じたのは、人は思想で切り分けることはできない、ということだった。吉本隆明の言うように、存在の、土着の根を持っている人は意外に多いのかもしれない。これが大衆なのではなかろうか。逆に言えば、デラシネはリベラルだということになる。