いつも賑やかなトランプ大統領だが、今回は、まず、�‘酩�同盟の兵士やリー将軍が人種差別擁護派だったとして非難され、彼らの銅像が撤去されたことが発端である。
��撤去をめぐって賛成派と反対派の活動家が衝突し、一名の賛成派が反対派の車の暴走で死亡した。
��トランプ大統領は、撤去反対派を（つまり南部同盟を）人種差別派として非難せず、どちらの暴力も悪いなどと喧嘩両成敗のコメントをしたことで、政権の助言機関の大企業経営者たちがトランプを非難して辞任したことである。
１．問題の背景
この問題をめぐって、いろいろな報道があり、また評論家たちも意見を述べているのだが、賛否はともかく、私には事件の全貌や背景がもう一つ分かったという気がしない。つまりは、アメリカとアメリカ人が分かっていないらしいのである。
南部同盟の兵士や将軍像は、７００ほど各地にあるとあったり、数千体に上るとの説もあり、建てられた時期は三度ほどのブームがあって、三度目は戦後の公民権運動のころに及ぶとのことである（正確には忘れた）。
まず、分からないのが、なぜ、そんなにたくさん必要だったのかということである。そもそも、リー将軍など主だった将軍だったら、出身地と主要な戦場の二つ三つではないのだろうか。ゲチスバーグで降伏して南北戦争が終わったのなら、そこに、北軍のグラント将軍（だったか）とリー将軍の像はあるべきだろうと思う。
南軍兵士の群像なら激戦地や多数の青年が出征した地元にあるべきと思う。誰かが例に出していたが、西郷隆盛の像は上野と出身地の鹿児島にある。多分、他にはないと思うが。
で、思い出したのがアメリカ各地に建てられだしたという朝鮮人慰安婦像のことである。最初のグレンデール市の場合は、十数人かの議員から構成され、市長は議員が毎年交代で就任するという自治体で、彼らの議決か市長の決定だったとのことである。つまり、アメリカでは事件に関係のない場所にも像を立てていく慣習があるらしいのである。
むろん、朝鮮系移民が多い地域なのだろうが、もともと、アメリカ自体にアメリカに関係のない像を立てることを容認する空気があるに違いない。この場合は、日本が女性の人権を侵害して奴隷化したこと、それを非難することは普遍的な正義である、と考えられているのだと思う。
対して、南軍関係の像が建てられていった時の状況は、想像するに、当時の南北はそれぞれ正当な政府であって、南軍の兵士も国のために戦って戦死した。彼らを顕彰するのは当然である、とする論理だったのだろう。
それが現在では、南部同盟の像とは、奴隷制度を容認する人種差別者たちの存在を認めることになる、他にどのような理由があろうと、その一点で許せないという状況になっているらしい。その思想の方向が、どれだけに広がりを持っているのか分からないが、多分、「正義」が支配しなければならないという観念があるに違いない。欧米人は、あいまいさとか機械でいう「遊び」の部分を認めないようである。根底には一神教があるに違いない。
２．「正義」の活動家の問題
昨日あたりの報道で、シーシェパードのワトソン代表は、今年は日本のクジラ漁（調査捕鯨）の妨害行動はしないと述べたとのことである。彼も「正義」の人なのだろうが、歳を取って穏健派に転向したのか、資金不足になっただけなのか知らないが。（資金提供者が誰なのか、言われているように精肉業界なのか知りたいところではあるが）
人種差別反対・少数民族の人権確立も正義の一つであって、これに理論的に反対できる人はいないだろう。ただ、これがアファーマティヴ・アクションとなれば議論になる。
今でも、黒人はアファーマティヴ・アクションで保護されているのだと思う。アフリカ系アメリカ人のシェルビー・スティール『黒い憂鬱』は、これが不正な逆差別を生んでいる、差別されたと主張することで不当な利益を得ていると論じている。
さらに、不法移民の保護（聖域都市）もアファーマティヴ・アクションに違いない。
ということでの（多数派の）大衆の反乱の結果がトランプ大統領の出現だった。知識人やメディアは正義と称するきれいごとを主張し、大企業経営者は不法でも何でも、低賃金労働がいいのである。それでもだめならメキシコへだと工場移転していたのが、トランプはメキシコからの輸入に高関税をかけると脅してきたのだった。
で、結論。この問題とか毎度おなじみトランプ騒動の背景には、トランプ政権による既存の多数派擁護がある。欧米の一神教の下では、知識人になればなるほど「正義」の看板に弱くなるようである。
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