カバンなのに、この世のあらゆる本を蔵書しているという「鞄図書館」。しかも、話す。
相棒は、あらゆる時空を越えて生き続けている鬚面の「司書さん」。
そんな設定だけでも、十分に突飛だ。
本を取り扱うので、本をめぐるちょっといい話が読み切りで続くのだが、
毒の多い言葉を吐き続けるカバンは、必ずゲーテの言葉を引用してウンチクをかます。
こういう面倒な制約があったせいか、2巻から3年半ぶりの新刊である。
特に、地方都市の図書館に勤めるホンモノの司書や、
日曜大工で作られ、いつのまにか鞄図書館同様に話し始めた「箱図書館」の物語には、
メタ図書館話というか、本と、本を愛する人たちのために本を提供する図書館、
そして、図書館に勤める司書という仕事に対する強い敬意がうかがわれた。
ただし、取り上げられてた本が、すべて版元の東京創元社の本ばかりなのは、
事情はわかるとはいえ、少し残念な感も。
むろん、それだけの制約があっても、
きちんと作品として仕上げてきた芳崎せいむを誉めるべきなのかもしれないが。
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