久しぶりの新刊だが、ここへきて新キャラが登場した。
「ばーちゃん」である。
「ばーちゃん」は「とーちゃん」のかーちゃんてあるらしいのだが、
昔ながらの家庭漫画にありがちな、良妻賢母的な静かな女性ではない。
まず、オシャレだ。
動きやすいゆったりとした服に、着古したコートを羽織り、
帽子からのぞく白髪は短く切りそろえられ、細身の黒縁メガネをかけている。
使い慣れた風の肩掛けの大きなカバンからは、いろんなものが出てくる。
10年前の加藤登紀子か、オフの日の上野千鶴子か、
樹村みのり作品のの主人公が40年たったらこんな感じか、といった印象だ。
しかも、関西アクセントで、ゆるいが的確に本質を突く言葉を発するあたりは、
かつての中島らもを思い出させる。
とーちゃんのスタンスが基本的に見守る立場で、
よつばが脱線しかけた時にだけストップをかけるのに対し、
ばーちゃんは、自らよつばの生活モデルとなり、
ひととしてあるべき姿を示そうとしている。
これまで、「よつばと!」に登場するのが、とーちゃん以外は他人ばかりなので、
ばーちゃんのように、よつばと積極的にかかわり導いてくれる人はいなかった。
家事も得意で、いろんなことを知っていて、子どもの扱い方もうまく、
たぶん資産家で、本気で生きているばーちゃん。
ばーちゃんが登場したことで、「よつばと!」の世界がさらに活性化されたようでもある。
そして、ばーちゃんがじーちゃんと暮らす家に帰る日、
よつばは、「そうはさせん」と荷物を隠したり、いわゆる無駄な抵抗をするのだが、
タクシーが見えなくなると、「あーあ、かえっちゃった」とケロリとした感じになる。
自分が無力な子供であることを自覚した上での、よつばなりに儀礼なのだろう。
ところで、ばーちゃんの使いこなす関西アクセントがあまりに自然なので調べてみると、
あずまきよひこ自身が加古川出身でネイティブな関西語の使い手だった。
ただ、ばーちゃんがよく使う「靴そろえな」「食べな」という「な」で終わる言葉が、
「靴そろえろよ」「食べろよ」という命令口調ではなく、
「靴そろえなさいよ」「食べなさいよ」という促す口調であることに、
関西以外の人に、どれだけ理解してもらえるのかが少し気がかりだ。
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