この巻は、イギリス人文化人類学者のスミスたちのが訪れた都市での物語。
スミスたちを受け容れた有力者らしき男の妻・アニスが、この巻の乙嫁だ。
広い庭のある大きな屋敷で、多くの使用人にかしずかれる豊かな生活、
優しい夫、子どもにも恵まれ、申し分のない暮らしぶりなのだが、どこか孤独。
そんなアニスに、彼女の世話をしている使用人は、「姉妹妻を持つべきですわね」という。
「姉妹妻」とは、結婚して子供のいる女性同士が契りを交わし、
嬉しい事も、悲しい事も、悩みもなんでも話して、
お互いの心の本当の理解者になる一生の親友だ、という。
そんな相手と知り合うなら、風呂屋に行くのが良いといわれ、
アニスは、その使用人に連れられ、風呂屋に向かう。
そこで、豊満な胸を持つ一人の若い母親・シーリーンを見つける。
どんなに言い訳をしても、姉妹妻となるシーリーンを見つめるアニスの視線は、
もう、完全に恋としか言いようがないようなもので、
当時の「姉妹妻」という制度の本当のところはどうだったのかというような、
余計な詮索をすることが全く意味をなさないほどに、
一巻まるごとの百合の物語を描きたいという森薫の強い意志が見て取れた。
あとがきマンガによると、「縁組姉妹(ハーハル・ハーンデ)」という風習が本当にあったらしい。
また、風呂場のシーンが多かったせいか、女性の裸はやたらとあった分、
細かく描き込むような文様や細工が登場する場面が少なく、
「描くところが、もうない」とのたまうような、「まさかの不安感」にかられた、とも。
というわけで、今回の念入り描写シリーズは、風呂屋か。
ログインしてコメントを確認・投稿する