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2011年06月14日15:55

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小説の中の謎(85)  年上の女

 仁木英之「僕僕先生」2006年 新潮社は、第18回日本ファンタジーノベル大賞受賞作である。
 唐の玄宗皇帝がまだ名君だった時である。前県令の息子王弁は、二十歳すぎても何もせず、ただ父の財産で暮らすことだけを考えているニートであった。父の心配の種はこのバカ息子をなんとかせねばということにあった。
 一方、現役のときは孔孟の儒教の徒であったが、そうでなければ出世できなかったからだが、引退した後は老荘の徒となり、不老長寿の道を究めたいと願うようになった。
 近くに、仙人が住むようになったことを知った父は、息子と一緒に仙人修業をしようと、それで息子にやる気を起こさせようとして、仙人のもとに供物を持って行かせることから物語は始まる。
 驚いたことに、仙人は少女であった。しかも、何かと王弁青年に命令し、酒は豪快に飲むヤンキーちゃんであった。そして、ヤンキー仙人は、王弁を修行の旅に連れていく。
 印象に残ったのは、王弁が混沌に呑み込まれて、脱出しようともがく場面である。まるで、ニートの心象風景のようだ。王弁青年は修行を終え、仙人から与えられた最終試験、医者になっての人助けもできて、めでたく仙界へ迎えられることとなったのである。
 このヤンキー仙人は、育ちもわからない、年は忘れたとのことで、当然、(何千歳か)年上の人である。どうやら、近づいてくる王弁に、一目ぼれしたらしい。だから、少女の姿になったのであろう。ふつう信者に会う時には、仙人らしい、老人の姿になるのだから。王弁も、少女の姿に魅かれているのであるが、何千歳だとか、老人の姿だとか見ているものだから、すっかり腰が引けてしまう。そういう面では、少しエロチックなユーモア小説でもある。
 このファンタジーは、唐代に場所と時間を借りて、現代日本のニート問題を扱ったものである。ニートの指導者のひとつのタイプは、しっかりものの年上の女らしい。確かに、ありそうなことである。
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