森鴎外「阿部一族」の印象は、いったいどうして一族滅亡の連鎖反応を止められなかったのか、ということだった。一族の当主はでくのぼうなのか。最初の当主も、二番手の当主も。そろいもそろって。
もっともギリシャ悲劇でも、「オイデプス王」など、予言のとおりに滅びていく。マクベスにいたっては、喜劇的にあがいたあげく滅びる。運命にごまかしはきかない。
確か、ジェイムズ・ジョイスだったか、運命をだます知恵・・・というようなことを言ったと思うのだが。
しかし、年をとった今となっては、運命には従うべし、と思う。運命は従うものを導き、逆らうものを引きずって行く。
「自然主義」小説というジャンルは、あるいは、一族の興亡を描いた大河小説は、一族を動かしていく運命を描いたものではなかったか。パール・バックの「大地」も、メンデルの遺伝の法則ではなかったに違いない。島崎藤村の「夜明け前」も。
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