シャーロック・ホームズの生みの親コナン・ドイルは、医者でもある科学者なのであるが、同時に、超常現象をも信じていた。超常現象とは、霊媒師がカードの裏を読んだり、手を触れず物体を異動させたりする科学では説明のつかない現象であるが、ドイルの生きた19世紀末から20世紀初頭にかけて、世界的に流行していた。
ホームズは、殺人事件の謎を解く代表的な名探偵であるが、その手段は、科学的分析と、論理的な推論を積み重ねることであった。その作者であるドイルが、どうして科学で説明のつかないことに強い関心を持ったのだろうか。
ドイルは、霊媒師が決してインチキや手品を使わずに、説明のつかぬ現象を起こすことから、超常現象の存在を信じたようである。
科学者であり、論理的推論の名手である探偵の生みの親であり、同時に、科学で説明のつかぬ超常現象の信者であることに矛盾はなかったのだろうか。
いやむしろ、ポーと違って健康な精神の持ち主だったのかもしれない。科学ですべてが説明できるわけではない。科学者として科学の限界を知り、別の説明を求めたのであろう。
シャーロック・ホームズを読んで不安になる人はいないであろう。ドイルもまた不安の心はなかったに違いない。通常は、それは信仰の役割なのであるが、ドイルの場合は超常現象だったのである。
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