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2010年11月11日11:08

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小説の中の謎(5)  極悪人の進化

 スチーブンソンの「宝島」のジョン・シルバー、マーク・トゥエインの「トム・ソーヤーの冒険」のインジャン・ジョーは、鮮烈な印象を与える極悪人である。ジョン・シルバーの快活にして冷酷という二面性、先の見える目をもった悪人は、善人の行動にも通じるものがある。白人とアメリカ・インディアンとの混血児、インジャン・ジョーの白人への憎悪などが、外面的にではあるが、目に見えるように描かれている。
 近年では、トルーマン・カポーティの「冷血」がある。白人とインディアンの混血児の起こした、実際の一家殺人事件を再現して、この犯人の内面に迫っている。この作品は映画にもなった。
 極悪人は、内面をもったヒーローへと進化した。「羊たちの沈黙」の天才にして殺人・食人鬼の博士など、その最たるものであろうか。
 かくして、加害者はヒーローとなる。もともと、ピカレスク・ロマンなどの悪漢の活躍を中心にしたジャンルがあるが、この悪漢は、実際には善人だったりしたのである。真の極悪人のヒーロー化は近年のことであろう。
 なぜか。結局、悪人は何物にもとらわれず、積極的に悪事をなす。これが、痛快なのであろうか。善人は、世のしがらみにとらわれて、まごまごする。被害者やその遺族に到っては、沈黙してしまうことが多い。昔のテレビドラマ「QB7」に描かれたようにナチスによるホロコーストに対するイスラエル側の追及や対抗措置には峻烈なものがあったが。
 要するに、被害者は面白くないのである。被害者は沈黙し、加害者には雄弁な弁護士がつく。本を出せばベストセラーになることもある。
 被害者も進化する必要があろう。
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