「発掘!単行本初収録コラム集!!」だそうだ。
単行本になっていないだけあって、いわゆる「若書き」の古い原稿も多い。
意外というか、あたりまえというか、
80年代のナンシー関は、独特の着眼点を持っているものの、まだ普通のライターだ。
横に添えられた版画も、忠実に写し取ろうとするだけで悪意はないし、
添えられた文字も、単に「坂本竜馬です」だったりする。
つまり、あのナンシーをしても、ナンシーは一日にならずだったわけだ。
それでも、「つまらなかったからチャンネルを変える」ことを
「事前に、その番組のつまらなさを見抜けなかった」がゆえに「恥」とする姿勢は、
後のナンシーへ通じるストイックなテレビウォッチャーぶりである。
それにしても、最初に載っている嘘自伝「彫っていく私」に、
父は代々米粒に彫刻して仏像を作る家の跡取りだったが、
その家の主は、米粒を彫り続けることで仏像に魂を吸い取られて40歳で死ぬ、
と何の気なしに書いていたのが、なんとも辛い。
24歳のナンシー関さんよ、あんた本当に40歳で死んだんだよ。
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