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2023年02月25日09:10

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浮世の謎(14) 集団就職をモチーフとした小説や朝ドラ

 鏑木蓮「思い出探偵」PHP文芸文庫2013―2016第5冊(原本2009年)所収の「鶴を折る女」は集団就職をモチーフにしたものだった。
(著者は(1961-2023)京都市生、仏教大学文学部卒。広告代理店勤務を経て推理小説作家)・・・それにしても若くて亡くなってしまった。
 1950年(昭和25)岩手県石鳥谷生れの15歳の少年が仕事のつらさと、約束の定時制高校に行かせてもらえない怒りと落胆で、逃げ出して上野駅まで来たのだが、そこで、偶然4歳上の女性に会い、「働いて金を貯めて自力で高校へ行け」と諭される。彼女も4年前に仙台からの集団就職だった、と言う趣旨である。小説は、その40年後に、名前もはっきりしない恩人の女性に会って礼を言いたいと「思い出探偵社」に依頼に来る。・・・探偵は波乱万丈だった女性の人生を辿って、依頼主の望みを伝えるのだが・・・。

 ということなら、他にもいろいろあったと思い出したのである。

 出久根 達郎(でくね たつろう、1944年生まれ) は茨城県行方(なめかた)市生まれの作家。中学卒業後集団就職で東京の古書店に住み込みで雇われた。その頃のことをエッセイに書いていたが、夏になって、知らないおじさんが店にやって来て、そっと外へ呼び出した。アイスキャンデーをくれて、ちゃんとご飯を食べているかと話しかけたとのこと。

 2017年朝ドラ「ひよっこ」は、茨城県北茨城市(福島県境の山村、名こそ流れてなお聞こえけれの「勿来の関」付近)に生まれたヒロインが、東京オリンピックの翌年に集団就職で東京で働くことになった。実は、前の年にオリンピック施設建設作業員として出稼ぎに行って、行方不明になった父親を捜したいという思いもあったのである。

 集団就職と言えば東北のことだと思い込んでいたが、茨城県からもあったのに驚いた。

 で、十数年前、私が千葉県柏市の布施弁財天に行った時だが、近くの交差点のガードレールに「北へ流れるあの雲が、津軽野づらで雪になる、俺の分まで働き終えて、親父今頃囲炉裏酒、ああ帰りたい、帰れない」とマジックインキで書いてあって、驚いてメモした。
 それこそ集団就職の人かと思ったのだが、今回調べてみると、それではなかった。
 「津軽慕情」2004年(平成16)作詞平山忠夫、作曲遠藤実のもので、時代が合わない。
 歌手が山本謙司で、この人が津軽生まれの(1943年生まれ)民謡歌手とのことで、どうやら自分自身が歌手になるために東京へ出た時の気持ちを歌にしてもらったものらしい。確かに、歌手になるまで帰郷しない決心だったのだろう。

 ただし、この歌詞をガードレールに書き込んだ人は、集団就職ではないにしても望郷の思いがあったのだろうと思う。

 望郷の歌なら、明治維新で人口が流動化し、東京行った人もたくさんいた。
 島崎藤村「ヤシの実」もその思いだろうし、ドイツ民謡ムシデンで、園の小百合なでしこ垣根の千草に始まる「故郷をはなるる歌」は学校で習った。今書いてみてわかったが、花ばかり歌っているが、つまりは恋人との別れを惜しんでいたのだった。

 最後に思い出した。昔読んだ新聞の漫画に、町へ働きに出た子タヌキが布団で泣いている。田舎にいる母タヌキが息子タヌキを思って泣いている、というものだった。


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