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2021年11月22日08:54

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皇位継承16〜国柄と憲法の乖離

6.根本的には国柄と憲法の乖離の問題

●日本の国柄と天皇

 私は、今回の有識者会議の議論を通じて、わが国が安定的な皇位継承を実現するためには、わが国の国柄と現行憲法の規定の矛盾を解消することが根本問題だと考える。
 わが国の国柄は、古来、皇室を中心としてきている。そのことは、江戸時代における歴史の研究によって深く認識された。幕末の危機において、徳川幕府は朝廷に大政奉還を行い、明治維新は天皇を中心とする近代国家を実現した。
 明治時代に日本人自身が作った大日本帝国憲法では、天皇について明確に定めていた。「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ」等である。
 これに対し、現行憲法では、次のように定められている。

――――――――――――――――――――――――――――――――
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 (略)
――――――――――――――――――――――――――――――――

 敗戦により、GHQの圧力で天皇は象徴となり、統治権の総攬から国事行為のみへと権限が縮小された。天皇は国政に関する権能を有しない。特に民族の中心として神に祈りを捧げる役割が軽視されている。また、憲法に元首と規定されておらず、日本国の元首は天皇なのか、総理大臣なのか、あいまいな状態になっている。今後、本格的に憲法を改正する際には、こうした規定を改めていく必要がある。この課題と、安定的な皇位の継承を実現することは、切り離すことのできないものである。

●憲法の規定上の問題

 今回の有識者会議のヒアリングで出た意見を検討すると、安定的な皇位継承の実現に関わるのは、現行憲法の条文のうち、第2条と第14条1項である。

#憲法第2条との関係
 まず第2条は「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定めている。世襲とは、その地位につく資格が現に天皇の地位にある人の血統に属する者に限定されることを意味する。皇室典範は、この血統を有する者の中で、継承資格者を第1条で「皇統に属する男系の男子」とし、かつ、第2条で「皇族」に属する者に限定している。
 今回のヒアリングで、憲法および法律の専門家の第2条に関する見解は分かれた。
 憲法学者の宍戸常寿氏は、次のように述べた。「憲法第2条の定める世襲は女性を排除するものではなく、皇室典範の改正により内親王・女王に皇位継承資格を認めることは可能である。憲法第2条の定める世襲は女系を排除するものではなく、国事行為およびそれに準ずる活動は女系の天皇でも可能である」と。この見解は、憲法第2条の規定は、女性天皇及び女系天皇を排除するものではないとし、女性天皇・女系天皇を可能と解釈するものである。
 これに対し、憲法学者の百地章氏は、反対意見を述べた。「女系天皇は、2千年近い『皇室の伝統』を破壊するだけでなく、憲法違反の疑いさえある。もしわが国で『女系天皇』を容認すれば、その時点で初代神武天皇以来の皇統は断絶し、新たに別の王朝が誕生してしまうことになる。正統性が問われる」と。この見解は、女系天皇は、憲法第2条の規定に違反する疑いがあるという意見である。
 元最高裁判事の岡部喜代子氏は、「男系女子の皇族に皇位継承資格を認めることは望ましい」という見解を述べた。女系天皇については、「憲法違反であるとの説を採ることはできない」とする一方、女系への皇位継承資格の拡大は「強固な反対がある」として男系女子にとどめるべきだという意見を述べた。
 憲法学者の大石眞氏は、皇位継承権について「内親王・女王にも認めるとともに女系の皇族にも拡大するのが基本的な方向としては妥当」としながら、「古来、皇位が男系のみで継承されてきた伝統は重いものであって、それによる継承可能性が十分にある時点において、いわば一挙に、皇位継承資格を内親王・女王にも認めるとともに女系の皇族にも拡大するという大きな転換を遂げることが最善の方策とも思えない」と述べた。
 有識者会議での憲法および法律の専門家の見解を受けて、加藤勝信官房長官は6月2日の衆院内閣委員会で、憲法2条の政府解釈について「『皇位は、世襲のものであって』とは、天皇の血統につながる者のみが皇位を継承することと解され、男系、女系の両方が憲法において含まれる」と述べた。
 これが政府の公式見解だとすれば、政府はどのような議論を経て、女系天皇は合憲という見解に達したのだろうか。憲法学者の中に、百地氏のように女系天皇は憲法第2条の規定に違反する疑いがあるという意見がある中で、十分な議論のないまま政府が特定の憲法解釈を採ることは、軽率である。
 わが国の歴史においては、皇位は一貫して男系によって継承されてきている。また明治時代の皇室典範では、男系男子による継承を定め、現行の皇室典範もこの規定を保っている。私は、現行憲法を制定した時には、皇位は男系男子で継承することが大前提になっており、男系女子及び女系皇族が継承することは想定されていなかったと考える。ただし、その前提を明示した規定ではないから、純粋に憲法の理論上は、男系女子の皇位継承及び女系による継承も可能という解釈が現れる。この点に関しては、歴史的には、男系女子が天皇になった例があるので、男系女子の皇位継承は必要に応じて可能として担保しておくべきと考える。これに比し、女系継承はわが国の歴史上に例がない。百地氏は「もしわが国で『女系天皇』を容認すれば、その時点で初代神武天皇以来の皇統は断絶し、新たに別の王朝が誕生してしまうことになる。正統性が問われる」と述べているが、全く同感である。
 憲法第2条に定めるように、皇室典範は国会で定める法律であるから、女性天皇にしても女系継承にしても、これを可能という規定に皇室典範を改正すれば、可能になる。私は、この問題は、現行憲法がわが国の国柄と歴史を十分踏まえて制定されたものではないことによっていると考える。
 戦前の皇室典範は、憲法と同じく国家の根本を定める特別の法だった。だが、戦後の皇室典範は、GHQの占領下に内容を簡素化され、また国会で改正できる普通の法律と同じものになった。今後、日本人自身の手による憲法改正を成し遂げた後に、皇室典範を位置づけ直し、そのうえで皇室が末永く繁栄していけるように内容を整備する必要がある。

 次回に続く。

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