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2013年06月26日22:26

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続ひとくち童話(7) 空の上に海がある

 曇り空やしとしと雨。それに大粒の土砂降りが続いて、今日の日曜日は久しぶりの梅雨の晴れ間です。おかあさんは朝早くから大量のせんたくです。なにしろ、しんいちくんは毎日どろんこになって帰ってきます。昔から、どろと子供は友達ですからね。
 朝ごはんが終わって、海辺へ行ってみようか、という話になりました。おとうさんとおかあさんは、毎日黒い雲に抑えつけられている気分だったので、天井もない、壁もない、何もないところへ行きたくなったようです。
 もちろん、しんいちくんもお出かけは大好きです。

 ドライブの途中にある田んぼは、どこまでも緑色になって揺れています。しばらく前には、水の中に小さい苗がならんでいただけだったのです。
 そして、その前は・・・しんいちくんは思い出しました。
 「そうだった。土だった。そして、どろもあった」

 さあ、浜辺へやってきましたよ。空は青いし、海は青いし、浜辺は白いし・・・。そして、白いカモメがいっぱい飛んでいます。
 あれ、しんいちくんが何かを見つけましたよ。かにです。しんいちくんが見ていると、かにが海の方へ走っていって、砂の中へもぐってしまいました。
 そこへ波がやってきて、かにのもぐった後を平らにならしてしまいました。もう、かにがどこに行ったのか分かりません。
 波が砂の上で立ち上がっては、白くくだけて、海の方へ帰ってゆきます。と思っていると、いつの間にか、また立ち上がってやってきました。しんいちくんの足もとで波はくだけて、そして、青い海へ、みんなのいるところへ帰ってゆきますよ。
 海の方をみると、波の上が白くなって次から次へとやってきます。
 「海の水は、みんな順番に浜辺へやってくるんだ」
 「そうか、たくさんの水がいるから。だから次々・・・次々・・・休みなしにやってくるんだ」
 
 空はどこまでも真っ青。でも、ところどころ白い雲が浮いています。
 そして、海も真っ青どこまでも。でも、波の上や波打ち際で白くなっています。
 「そうだったんだ。空と海は友達だったんだ」
 いや、それだけじゃない。しんいちくんは気がつきました。
 「海のもとは空だ。空から降る雨が海になるんだ」
 そのはずですよね。だから、色も姿も似ていたんです。

 そうだった。雨は海の波と同じだ。空は、みんな屋根に、地面に海にやってくる。次々・・・次々・・・。
 だから、毎日に毎日雨が降っても無くならないんですね。
 
 雨の一隊は、地面ではくだけて白くなります。そして、土をどろにかえてしまいます。だから、おかあさんが毎日なげいているんですね。
 雨の別の一隊は土を緑に変えてしまいます。

 しんいちくんは夜ふとんのなかで考えていました。空の上にも海がある。カモメも飛んでいるし、きっと魚も泳いでいる。かにも・・・きっと雲の中にもぐっているに違いありません。
  
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