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2013年06月10日23:12

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続ひとくち童話(4) 花しょうぶの池

 しんいちくんの家の下の方に瀬戸大池があって、周りが公園になっています。梅雨の季節になると、花しょうぶが咲きます。
 しんいちくんとお向いのけんじくんが二人のおかあさんに連れられて瀬戸大池へやってきました。池には木の橋が渡してあって、橋の下には紫の花しょうぶがいっぱい咲いています。

 しんいちくんとけんじくんは、おかあさんたちの「走ちゃダメ」という声がひびくなか、迷路のような橋をあっちに曲がり、こっちの曲がり、一緒に曲がりと、大忙しです。
 いったい何回まわったんでしょうか。二人はさすがにくたびれて、池のほとりにある大きな石に腰をおろしました。
 息が切れます。それになんだか目も回っているようです。
 おかあさんが水筒とビスケットを持ってきてくれました。冷たいジュースをごくごく飲むと、燃えるようだった体が落ち着いてきました。

 まわりをみると、スズメがちゅんちゅん忙しそうです。よく見ると、一羽が飛んでくると、すぐもう一羽が追いかけてきます。
 「あれ、なんで追いかけっこしてるんだろう」しんいちくんは不思議に思いました。
 「きっと、兄ちゃんと弟なんだ」けんじくんが言いました。

 しんいちくんはおかあさんにもらったビスケットをそばに来たスズメに投げてやりました。すると、スズメはよってきてビスケットをくわえました。すぐ、もう一羽が追いかけてきて、つばさをばたばたしはじめました。すると、ビスケットをくわえていたスズメが、後から来たスズメのくちばしの中にビスケットをいれてやりました。
 「なんだ、おまえの分なのに」
 しんいちくんは、またビスケットを投げてやりました。スズメがよってきてビスケットをくわえる。すぐ、もう一羽がつばさをばたばたさせる。すると、ビスケットをそのスズメのくちばしに・・・。

 「そうか、わかった」しんいちくんとけんじくんは同時に声をあげました。
 「え、何が分かったの」しんいちくんが尋ねます。
 「この二人はかあさんとこどもなんだ」けんじくんが答えます。
 「きっとそうだ。ぼくもそう思う」しんいちくんは、なんだか嬉しくなりました。同じ考えの人がいるのは、本当にうれしいことですからね。
 それかた二人でビスケットを割っては投げてやりましたが、中には、池の中に落ちたものもありました。
 すると、ばしゃっと水しぶきが上がりました。池をのぞきこむと、・・・大きな魚の口・・・・。そう、鯉です。
 二人は、こんどは池の中に投げてやりました。鯉がばしゃばしゃと集まってきます。
 そのたびに、池の水が波になって広がってゆきます。・・・あれ、向こう岸まで波が行くぞ。二人は波より早く向こう岸に行こうと池を回りました。
 でも、波はもうついていて、岸に打ち寄せていました。それに、水の中にはえている花しょうぶの根元にも波が来ています。花しょうぶの影が波になって揺れています。
 影だけではありません。花も一緒に揺れています。鯉と花しょうぶは、きっと仲良しなんですね。

 おかあさんがよんでいますよ。
 「しーくん。けんくん」どうやら帰る時間のようです。

 


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