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2013年06月08日20:18

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続ひとくち童話(2) 満月の夜

 しんいちくんは何故だか目を覚ましてしまいました。おしっこかな? いやそうでもない。
 どうして? 
 そうか。部屋が明るい。カーテンのすき間から光がさしこんでいす。
 大きな車が外にいるんだ。しんいちくんは起き出して、そっとカーテンのすき間から外をのぞいてみました。
 何もいません。それに車ならブルブルブルなんて音がしますよね。耳をすましても何の音もしないのです。
 庭が昼のように明るくなっています。でも、ぼんやりした明るさなのです。
 しんいちくんは上を見上げました。
 あ、お日様。・・・ではないようです。そうです。これが満月なのです。

 夜は暗いものです。しんいちくんも寝るときには、いつも、おかあさんにお願いです。
 「寝てしまうまで、明るくしておいて。暗いと目がつむれないでしょ」
 でも、しんいちくんは、後がどうなっているのか分からないのです。いつの間にか寝てしまっているようなのです。

 しんいちくんはそっと部屋を出て、何の音もしないのを確かめてから、玄関へ出てきました。おとうさんもおかあさんも眠っているようです。
 玄関では、犬のたろうくんがいるのですが、首をあげてしんいちくんを見たと思ったらすぐに丸くなってしまいました。
 たろうくんも眠いんですよ。

 ところが、しんいちくんはこの不思議な明るさが気になってしかたがありません。そっと、玄関のカギをはずして外へ出てしまいました。

 庭は窓から見ていたように、明るくてとてもこれが夜だとは思えません。木も花もはっきり見えます。お向いのけんくんのお家もはっきり見えました。

 そうだったのか。夜はお月さまがお日様のかわりをしていたんだ。
 あ・・・。しんいちくんはもう少しで声をあげるところでした。何かがしんいちくんの方へ走ってくるのです。
 なんだ。・・・びっくりしたよ。ミミじゃないか。
 「えー。お前、寝ないのか。おかあさんにしかられるぞ」

 しんいちくんは自分のことを忘れてミミに言ってしまいました。
 しんいちくんは知らなかったのですが、猫は夜にも目が見えるのです。ミミにとっては夜も昼も同じなので、ミミ専用の出入り口を作ってもらっていたのです。

 しんいちくんはミミをだきあげて一緒に家に入って、またそっとふとんにはいりました。夜遊びはいけませんよね。

 朝、おかあさんが起こしに来ると、ミミもいっしょにふとんの中にいます。
 「二人とも、起きなさい。・・・今日はお寝坊ね」 おかあさんがあきれています。

 朝ごはんの時、しんいちくんはおとうさんに聞いてみました。
 「ねえ、夜にも明るいことがあるの」
 何も知らないお父さんが答えます。
 「そりゃね。白夜といって、夜にも明るい国があるんだよ」
 何も知らないおかあさんが答えます。
 「一度でいいから行ってみたいわね。しーくん」
 お父さんは聞こえないみたいで、新聞を読みふけっています。
 「大きくなったら、一緒に行こうよ」
 しんいちくんは、本当におかあさんを連れてゆきたいと思いました。
 
 
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