2011年5月ごろに書いていた「ひとくち童話」を再開することにした。短いからモチーフだけで書くのだが、うまく締めくくれるかどうか。
「スズメさんとハンバーグ」
しんいちくんは朝起きるたびに不思議なのです。いつも、ちゅんちゅんスズメさんの鳴き声がするのです。
いったい、いつから起きているのでしょう。それに、何を話しているのでしょう。今日こそおかあさんに聞かなくちゃ。いつも思うのですがいつも忘れてしまうのです。それは、途中にしま猫のミミがいて、遊んでやらないといけないからなのです。
でも、今日は大丈夫。ミミはまだ寝ています。
「ねえ、おかあさん、スズメさんは何の話しをしているの」
おかあさんは、とんとん包丁の音をやめずに答えてくれました。
「しーくん。目がさめちゃったのね・・・今朝はスズメさんたくさんいるしね。そう、スズメのおかあさんはね。うちの子はかしこいのよ、って言ってるのかな」
「ふうん」しんいちくんはちょっと首をかしげました。おかあさんは、ぼくのことどう言っているんだろうと少し心配になったのです。
「ねえねえ、他に何を言ってるの」
「そうねえ、スーパーでは今日は何が安いかなって、ね」
「ぼくもいっしょに行く」 しんいちくんは素早く言いました。
お昼が過ぎました。おかあさんとしんいちくんは、それに犬のたろうくんもいっしょに近所の幕山スーパーへでかけました。たろうくんは店には入れません。でも、しんいちくんが言って聞かせて、おかあさんが引き綱を棒にしばっておくと、おとなしく待っているのです。
「晩のおかずは何がいいかな」 おかあさんが考えています。
「スズメさんはなんて言ってたかな・・・」
「あ、ぼく知ってるよ」 しんいちくんは急いで言いました。
「ハンバーグにしようって言ってた」
「えー、本当」
「本当だって。ぼくにも分かるようになったんだよ」 しんいちくんは本当に聞いたと思いました。
それに、しんいちくんは知っていたのです。
「おかあさん、スズメさんの家はやぶの中だって言ったでしょう」
「そうね。昔からそうなのよ」
「でも、今は違うんだよ。ぼく知ってる」
そうなんです。しんいちくんは発見したのです。三軒さきの家の向かいに事務所があります。その屋根の下からスズメさんが出入りしていたのです。
すぐに、おかあさんに知らせようと家に帰ったのですが、台所からハンバーグの匂いがしてきて、そのまま言うのを忘れていたのです。
しんいちくんはスズメさんのことがたくさん分かってきたと思いました。ハンバーグも好きなんだし。もうすぐ、友達になれるかな。
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