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2011年06月20日11:41

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小説の中の謎(89)  物語の生成

 ジャネット・テーラー・ライル「花になった子どもたち」福音館2007年は、5歳の問題児ネリーと、その付きっきりの介護人の姉が、事情を知らない年取った大伯母に預けられることから始まる。ネリーの問題とは、姉にしか心を許さず、少しでも気に障る事があると、それが又多いのだが、金切り声を立て続けておさまらないることにあった。
 大伯母の家には花々の植わっている庭があるが、もうあまり世話をせず荒れている。その馬蹄形をした庭は、以前、ここに住んでいた作家が丹精して、「花になった子どもたち」という童話の背景に使ったものであった。悪い妖精が、子供たちに呪いをかけて、花に変えてしまうのだが、女の子を一人だけ口をきけなくしておく。そのうえで、庭に埋めたティーカップをすべて見つけて、テーブルに並べると、花になった子供たちが帰ってくる、と教えておいた。という物語であるが、そこで終っていて、子供たちが帰ってきたのかどうか分からない。
 しかし、大伯母が、庭仕事をしていると、その一つを見つけたのである。喜んだネリーは、すべて見つけて、子供たちをティーパーティーに招待すると張り切って、庭仕事に夢中になる。古いカップは次々見つかるが、最後まで見つからなかったポットを大伯母が見つけ、近所の子供たちがやってくる。ネリーは喜ぶが、姉のほうは、ひそかに、ポットがきれいすぎると疑いを持っていた。・・・最後の場面で、大伯母のシャベルに何かが当たる音がするのであった。
 これは、訳者解説にもあるように、庭仕事によって、問題のある子供を癒す物語であり、はるか「秘密の花園」に連なるものである。違いは、途中で終っている物語を完結させるというロールプレイングの仕組みを持っていることにある。自分ならどうするか。ネリーのように、いままでのこだわりが吹き飛んでしまうのか。たぶん幼すぎて、物語と実際が一致することに不審をおぼえないのであろう。
 続きは読者それぞれが・・・、これは「青い鳥」の最後の場面のメッセージであった。
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