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2011年03月01日13:36

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小説の中の謎(71)  饒舌の中の奇想

 カレル・チャペック「長い長いお医者さんの話」1931 は、子供の頃、岩波少年文庫のカタログで見て、首をひねっていた。長い行列ができるほどの名医の話かな? しかし、少年文庫は高かったし、すぐ読めてしまうしで、買うことはなかった。今、ブックオフで見つけて読んでみたところ、「長い」は「話」にかかっていることが分かった。やれやれ・・・。子供から見れば、お話は長いほどよい。私も、もっと、もっと、とせがんでいたことを思い出した。チャペックもたぶん、せがまれていたのだろう。長いことも役立つことがあるのだ。
 しかし、うんざりせずに読み進むと長いだけではないことが分かった。
 第3話「カッパの話」には、カッパたちが昔話にふける場面があるが、「水の中にはカッパの町があって、家具類は、かたい井戸水でつくってあったし、ふうわりしたベッドは、やわらかい雨水でつくってあった」のだそうである。さらに、水は、「鉄のような、麻のような、ガラスのような、ハネのような、クリームのようにこってりしたの、・・・」ああ、きりがない。次から次にイメージが言葉となってわいてくる。水にもいろいろある。そうだった。今は、世界各国の・・・名水たちがスーパーに並んでいる。
 第5話「長い長いおまわりさんの話」では、おまわりさんが拾った卵から、七つの頭をもつヒドラが生まれて始末に困り、動物虐待防止協会にひきとってもらう。ところが、そこへ魔法使いから電報が来て、そのヒドラは魔法にかけられた人間である。300年以内にそちらへ行くから待っていてくれとのこと。協会では困ってしまう。人間なら養老院か孤児院に入れなければならないが、どこも引き取ってくれない。とうとう、ひとりの協会員が自宅に連れ帰るが、近所にも家主にも怖がられ嫌われて・・・。すでに、そういう協会があったのだ。
 第6話「犬と妖精の話」では、粉屋の番犬が、犬の妖精が話しているのを盗み聞きして、昔、骨やハムやベーコンのいっぱいある犬のお城があったが、人間にねたまれて土の中に沈んだことをしる。それから、犬は何かあれば、土を掘るようになった・・・のだそうである。昔話によくある縁起譚である。 
 それにしても、カッパとは? チェッコスロバキアにもカッパの伝承があったのだろうか。訳者は中野好夫で、大先生の自由訳なのかとおもったが、挿し絵にもカッパらしく描いてある。画家はチャペックの弟ヨセフである。ところが、次のカッパの絵はカエルになっている。はて?ということで、新しい謎が出現した。
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