レオポール・ショヴォ「年をへたワニの話」は、ずいぶん無残な話である。
一応、絵本なのだが、まさか幼児向けでも子供向けでもあるまい。
経済学者の西部邁のエッセイで、安保闘争の指導者だった唐牛健太郎に勧められた、と書いていたので読んだのだが。その時は、わけがわからなかった。
年をとって自分ではえものを捕まえられなくなったワニが、孫ワニを食べてしまって群れを追放される。ナイル川を下って海に出たところで親切なタコに出会う。タコはワニに食べ物をくれ、ワニはタコに恋をするのだが、悪い癖なのだろうか、そのタコを食べてしまい、本当の孤独になるのである。
今思えば、確かに、闘争の指導者だった人が共感するのはよくわかる。自分自身がワニなのだ。
そして年をとれば思い当たることがある。自分が楽に生きるために、家族を友人を踏みつけにしたことがなかったか。
この絵本は、幼児にお戻りになった老人のための絵本なのではないだろうか。
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