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2021年11月17日10:57

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皇位継承14〜「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議」の検討

5.「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議」の検討

●有識者会議が論点整理

 令和3年(2021年)3月に、「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議」が新たに設置された。本稿では、名称を皇位継承策有識者会議とする。
 会議のメンバーは、大橋真由美氏(上智大教授、行政法)、清家篤氏(元慶応義塾長、労働経済法)、冨田哲郎氏(JR東日本会長、経団連副会長)、中江有里氏(女優、作家)、細谷雄一氏(慶大教授、国政政治学・外交史)、宮崎緑氏(千葉商科大教授、国際政治学)の6人である。うち、清家氏と宮崎氏は平成28〜29年(2016〜17年)の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長:今井敬・ 経団連 名誉会長)のメンバーでもあった。
 今回の有識者会議は、清家氏が座長となった。
 皇位継承策有識者会議は、4月以降、皇室や法律の専門家、小説家ら21人を招き、計5回のヒアリングを実施した。旧宮家の皇籍復帰や養子縁組、女性天皇、女系への皇位継承資格の拡大などの10項目について意見を聴いた。
 ヒアリングを受けたのは、次の人々である。岩井克己氏(ジャーナリスト)、笠原英彦氏(慶応大教授、日本政治史)、櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)、新田均氏(皇学館大教授、神道史)、八木秀次氏(麗沢大教授、憲法学)、今谷明氏(国際日本文化研究センター名誉教授、日本中世史)、所功氏(京都産業大名誉教授、日本法制史)、古川隆久氏(日本大教授、日本近代史)、本郷恵子氏(東京大史料編纂所教授、日本中世史)、岡部嘉代子氏(元最高裁判所判事、民法学)、大石眞氏(京都大名誉教授、憲法学)、宍戸常寿氏(東京大大学院法学政治学研究科教授、憲法学)、百地章氏(日本大名誉教授、憲法学)、君塚直隆氏(関東学院大教授、近代イギリス政治外交史)、曽根香奈子氏(実業家、日本青年会議所監事)、橋本有生氏(早稲田大法学学術院准教授、家族法)、都倉武之氏(慶応大准教授、日本近代政治史)、綿矢りさ氏(小説家)、半井小絵氏(気象予報士)、里中満智子氏(マンガ家)、松本久史氏(国学院大教授、神道学)。
 これら21人のうち、平成16年〜17年に行われた「皇室典範に関する有識者会議」及び平成24年に行われた「女性宮家創設に係る有識者会議」の際にもヒアリングを受けたのは、八木秀次氏と所功氏の2名である。八木氏は男系継承堅持派、所氏は女系継承容認派を代表し、ヒアリングに欠かせない存在となっているようである。両氏以外に過去に皇室関連の有識者会議のヒアリングを受けたことがあったのは、今谷明氏、大石眞氏、櫻井よしこ氏、百地章氏、笠原英彦氏の5名である。
 今回の有識者会議のヒアリングでは、21人のうち半数以上が男系男子を堅持するための旧宮家の皇籍復帰に賛成する一方、女系への資格拡大を積極的に支持したのは5人にとどまったと伝えられる。
 ヒアリングを終えた有識者会議は、6月16日に第7回会合を開催した。産経新聞の記事は、「現在の皇位継承順位を前提とし、男系男子を尊重した上で皇族数の増加を検討する方針を確認した」と報じた。清家座長は、今後の議論について「現在の皇位継承の流れを前提にして、皇族数の確保のための方策を検討していく」と述べ、ヒアリングに関しては「現在定められている皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないと考えている方がほとんどだった」と振り返ったと伝えた。男系男子を尊重した上で皇族数を確保する方策として、「旧宮家の皇籍復帰などの方向性を示す可能性も出てきた」とも産経の記事は書いた。NHKテレビのニュースは、産経と同じ趣旨の内容を報じながら、男系男子による皇位継承を明示せず、また旧宮家の皇籍復帰には触れなかった。毎日新聞の記事は、さらに内容が異なり、「女性・女系天皇などを巡る専門家の見解は二分しており、政府による報告は方向性には踏み込まず、論点の提示にとどまる可能性もある」と伝えた。産経・NHK・毎日のそれぞれの政治的なスタンスが記事内容に表れていると言えよう。
 有識者会議は、6月30日の会議で今後は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持できるようにすることと、皇族の養子縁組を可能とし、旧皇族の男系の男子が皇族に復帰できるようにすることの2案を中心に検討する方針を確認した。産経新聞の記事は、次のように伝えた。
 「清家氏は会議終了後、皇族数の確保の必要性について、憲法や皇室典範などで定められた役割(註 皇室会議の構成員、摂政等)があると指摘。その上で『悠仁さまの世代においても十分な数の皇族の方に皇室にいていただく必要がある』と述べた。具体的な方策としては『内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とすること、もう一つが皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子が皇族となることを可能にすることが中心となる』と語った。専門家ら21人へのヒアリングでは女性天皇、女系への皇位継承資格の拡大についても意見を求めていたが、清家氏は議論の整理には時間が必要だと説明した」
 続いて有識者会議は、2回の会議を行い、7月26日に中間的な論点整理を行った。悠仁親王殿下が皇位を継承するまでの流れを「ゆるがせにしてはならない」と明記した。このことは、悠仁様の代までは男系男子による皇位継承を行うべきことを確認したものである。その上で、有識者会議は、皇族数の確保策として、女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、皇族の養子縁組を可能にして旧宮家の男系男子を皇籍復帰させる案の2案を、優先的に検討する方針を打ち出し、政府に法的課題の検討を求めた。
 悠仁様の次代以降については「将来、判断すべき事柄ではないか」と議論を先送りした。ここには、女性天皇・女系天皇を否定せず、その可能性を排除しない姿勢が表れていることに注意を要する。
 有識者会議は今後、2案を中心に調査・研究を進めるとし、それでも確保が困難な場合は、旧宮家の男系男子を法整備により直接皇族とする案を、別途検討する考えも示したとのことである。ここで、旧宮家の男系男子を「皇統に属する」と位置付けた意味合いは重い。
 これからこの論点整理をもとに調査・研究を行い、その結果がまとまり次第、会議をまた開催する方針と伝えられた。(註11)
 産経新聞は、8月6日、有識者会議は最終報告のとりまとめに関し、女性皇族が婚姻後も皇室に残る場合は当面の間、配偶者と子供を皇族としない方向で検討に入ったことが分かったと報じた。当面の間、配偶者と子供を皇族としないということは、将来的に配偶者と子供を皇族とする可能性を保持するということになる。
 上記の検討において、秋篠宮の次女・小室眞子氏は、皇籍を離脱して結婚したので、直接的な対象にはならない。今後考えられるのは、天皇家の愛子内親王殿下、秋篠宮家の佳子内親王殿下、三笠宮家の彬子女王殿下、瑶子女王殿下、高円宮家の承子女王殿下の5人に関してである。最終報告が悠仁様以降に関する結論は先送りという形で女系継承に可能性を残すものになれば、これらの方々が旧皇族の男系男子孫以外の一般男性と結婚された場合、再び大きな問題が生じる。悠仁様と同世代の皇族男子が現在、他にいないからである。
 有識者会議は、本年秋の衆議院議員総選挙後に、最終報告を政府に提出する予定と伝えられてきた。政府は報告を受けて方針案を策定し、それを国会へ提出し、国会で議論が行われることになるだろう。


(11)先に竹田恒泰氏の「養子案」を紹介した。今回の有識者会議の論点整理では、旧宮家の男系男子を法整備により直接皇族とする案より、皇族の養子縁組を可能にして旧宮家の男系男子を皇籍復帰させる案を、優先的に検討する方針が出された。ここで、竹田氏の「養子案」があらためて注目されなければならない。竹田氏の「養子案」は、平成21年当時、旧皇族の復帰案と合わせた共同法案として、皇室典範改正準備室で検討されたという。皇室典範改正準備室は現在まで存続する。政府当局は、この時の共同法案を無視せず、共同法案から旧皇族の復帰案を除いて、あらためて養子案を準備すべきである。

 次回に続く。

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