1.トルーマン・カポーテ「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany’s)1958
映画1961年でオードリー・ヘプバーン主演
上流階級にあこがれる女性が主人公で、モデルはカポーテの母だった。
彼女はアラバマの田舎町モンローヴィルに代々住む一族の出なのだが、美人だったことを手段としてニューオーリンズの金持ちと結婚してカポーテを生んだ。更に本当の富豪を求めて子供をモンローヴィルの親戚に預けてニューヨークに行ってしまった。
この身勝手と言うか、運命に逆らう母の生き方をモデルとして、結局自死した母の追悼のために書かれたのだと思う。
題名は田舎者ホリーが持つニューヨークへのあこがれを表している。
映画ではホリーと同じマンションに住む作家が彼女を気遣っているが、この作家がカポーテ自身だろう。中年男がホリーの夫だと名乗って訪ねてくるのは、むろんカポーテの実父に違いない。
で、モンローヴィルの親戚に預けられたカポーテの生涯の親友になったのが弁護士のお嬢様で同時におてんば娘だったハーパー・リーで、評伝によればおてんば娘の彼女がお坊ちゃん然としているので、わんぱく少年のいじめの対象になっていたカポーテを守っていたとのこと。この少年少女時代のことはハーパー・リー「アラバマ物語」(To kill a mockingbird)で描かれている。原題は奇妙な感じがするが当時の南部の黒人差別批判の意味がある。
少年時代の自伝的作品「遠い声 遠い部屋」1948年 では、一人で遠縁の不気味な老人のもとへ行かされる少年の孤独な心が描かれている。また、ここに彼に付きまとう天使のような小悪魔のような二重人格の少女が登場するが、この少女がハーパー・リーだったのだろう。
ただし、預けられた先は遠縁には違いないが、親切で優しい老人の兄弟姉妹だった。長姉と次姉は仕立て屋で成功して裕福だったし、カポーテに仕立て卸の服を着せたので、これがはだしの悪童たちの標的になった。弟は農園の作業で妹が家事を担当していたが、この二人はカポーテの郷愁の人になっている。「おじいさんの思い出」I remember grandpa 、「クリスマスの思い出」、「誕生日のこどもたち」、「感謝祭のお客」などに描かれている。ここには「冷血」や「ミリアム」のような恐怖小説の要素は全くない。カポーテこそ二重人格だったのかもしれない。
2.サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」The Catcher in the Rye 1951
妙な題名だが、崖の上のライ麦畑から落ちてくる子供を助ける人になりたいという意味らしい。
成績不良で高校を退学処分になったホールデン・コールフィールドが、社会への嫌悪を饒舌に語る、言いたい放題小説。
ニューヨークの自宅に帰るまでに、街の中を彷徨し、いろいろな人と会ったり、遊んだりするのだが、そのたびに社会の偽善に嫌気がさしたり、何もかも気に入らず夜になってそっと自宅に帰って眠っている妹を起こして、これから遠くへ行って新しい生活をするとお別れを言うのだが、「それなら、一緒に行く」と用意をしだしたので、家出をあきらめて精神病院に入院する。(多分、妹は味方になってくれると安心して、強気の気持ちが収まったのだろう)
言いたい放題なところが、セリーヌ「夜の果ての旅」1932年 に似ているところがあるが、最後の場面はアフリカで愛人に殺される。
エピグラムに「スイス衛兵の唄」1793年
「ひとの夜は
冬の旅、夜の旅
一筋に光も射さぬ空のもと
われら道を求めゆく」
観光も時計産業もない昔のスイスはただの羊飼いの貧乏国だったので、最大の産業が傭兵と召使い供給(ハイジ)だった。ウィリアム・テル伝説のある独立は1848年とのことで、明治維新1869年の少し前だった。
3.映画「真夜中のカーボーイ」1969
主演ダスティン・ホフマン
ニューヨークの道端の靴磨きだが、西部の田舎から来た青年を騙して金を巻き上げた。田舎者の青年は必死になってニューヨークを探し回ってついにつかまえるのだが、その時には金はなかった。そのお詫びにと言って、靴磨きは男娼の仕事をあっせんしてやる。
それで金は稼いだのだが、結核にかかっていた靴磨きの男の病状が悪化したので、温かいマイアミで療養させようとバスで行くのだが。
4.「アニー」(Annie)は、1930年代の新聞連載漫画「小さな孤児アニー(Little Orphan Annie)」を原作として製作されたブロードウェイのミュージカル。
今までに3回映画化されたとのこと。
もの心の付く前から孤児院にいるアニーは、両親は生きていると信じて、両親に会うために何度も脱走を繰り返していた。
一方、ルーズベルト大統領の友人でもある大富豪は男の子をクリスマスに招待するために秘書の女性を孤児院に派遣する。
男の子だと指定されていたのだが、アニーの自分を連れて行ってと言うアピールにほだされてアニーを連れ帰った。
大富豪の方は近所の女の子が遊びに来たと思っていたが、いつまでもいるので不審に思い始める。それで秘書が本当のことを白状したので、それならアニーの両親を探してやろうと懸賞金を付けた広告を出したのである。
「赤毛のアン」のオマージュ作品の一面がある。男の子を探して女の子を連れ帰るとか、名前もそうだが。
ログインしてコメントを確認・投稿する