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2024年01月10日14:27

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フィクションと現実(43) 回想形式のドキュメントとフィクション

 1.ハーパー・リー「アラバマ物語」 少女時代の回想
 著者は1926年― 2016年。
 「アラバマ物語」1960原題 To Kill a Mockingbird) 映画化1962年グレゴリー・ペック主演、時代は1930年代で、場所は南部だが、作者のハーパー・リーはアラバマ州の田舎町モンローヴィル出身なので、白人女性暴行犯とされた黒人青年の事件の弁護士を引き受けた父親を回想した社会派の一面を持つ。
 もうひとつは、そのころ子供だったハーパー・リーが幼馴染たち(その一人がトルーマン・カポーテ)と遊んだり、いたずらしたりするわんぱく物語である。

 60年代中頃に、1959年カンザス州の農村で起きた一家殺害事件の地元取材の時には、リーはカポーティに同行している。

 2.トルーマン・ガルシア・カポーティ「遠い声 遠い部屋」 少年時代の回想
 著者は1924―1984
 1943年、幻想的な短編「ミリアム」で天才作家として注目を集めた。

 「遠い声 遠い部屋」other voiceis,other rooms(1948年)
 内容は、孤児になった少年が遠くに住む会った事もない祖父のもとへ旅する物語である。旅の途中で、いるのかと思えばいないし、一人になったり二人になったりする不思議な少女に出合う。
事実は、トルーマンの母がニューヨークで一旗上げるために邪魔になる息子を、遠縁の大伯母・大叔父に預けたのである。早くに両親を亡くした母自身も大伯母たちに育てられている。大伯母の長女はモンロービルで成功した洋裁店主で、トルーマン少年をかわいがり着飾らせたので、悪童たちの餌食になったのだが、その状態を見つけたハーパー・リーは悪童たちを罵倒して追い払っていた。多分、田舎町の悪童たちも女には手を上げないという作法を教えられていたのだろう。
 トルーマンはこの大伯母・大伯父(実際の血縁距離は複雑)には感謝していたのだろう。ほのぼのとした童話風の「おじいさんの思い出」とか「おばあさんの思い出」などがある。

 この「遠い声 遠い部屋」では、病気で寝ている老人がいる屋敷となっているのだが、事実と全く違うわけで、母に捨てられたという心理的トラウマがあったのだろう。
 ニューヨークに出て望み通りの富豪と結婚した母だったが、結局破綻して自死してしまった。その経過を踏まえて書かれた「ティファニーで朝食を」 Breakfast at Tiffany's(1958年)は母への鎮魂の意味があったのだと思う。映画化は1962年で、映画「アラバマ物語」と同時だった。

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