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2024年01月09日15:04

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フィクションと現実(41) 池井戸潤「ハヤブサ消防団」集英社2022

ハヤブサ地区は中部地方U県S郡にあるとのことだが、多分長野県あたりの山間部の片田舎であろう。主人公野々山太郎は、ペンネームが三馬太郎の小説家なのだが、新作に行き詰って故郷のハヤブサに戻ってみて改めて夜の星と緑の大自然が気に入って、父の死以後誰も住まなくなった実家を改修して住むことにしたのである。
 父は早くに名古屋に出たので主人公も小学生の時に来ただけで、何十年ぶりだった。
なので、最初は野々山の家を探すことから始まった。出会ったおばあさんに野々山の家はどこだと尋ねると「あんた、誰やね」と聞き返された。

 家に住むと、さっそく自治会に入ってくれと人がやって来た。面倒くさいなとは思ったが、ここでは一人では生きていけないからとの説明に、それもそうだと納得したのである。
 で、寄り合いで紹介されると、地区に一軒ある居酒屋に誘われて、そこで消防団の勧誘である。
 消防署はあるんでしょうと問い返すと、あることはあるが30キロも先で、着いた時には焼け落ちている。だから地元の消防分団で瀬すんだと。
 消防団員は地元の工務店、学校の先生、工場勤務、役場の土木課職員、それに洋品店主などだった。(農業はいないが、皆小さい畑ぐらいの兼業農家なのだろう)
 地元の若い者は皆消防団員だとのこと。
 野々山の家の前には大きな桜の老木があるので、桜屋敷と呼ばれているとのことだった。

ところがハヤブサ地区は火事の多いところだったのである。
どうして火事になるのか? そこから推理小説になっていく。

 ★海風:
 私は現役で農業試験場に勤務していた時に、津市から10キロほど奥の経ヶ峰の麓あたりにある野菜関係の試験場に転勤して2年ほど住んでいたことがあった。(野菜栽培研究をしたわけではなく、県を含めて全国の野菜研究の連絡調整係だった)
 「鈴鹿峯の照りては曇る竹の秋」(竹の秋は春の季語。近所に竹林があって、タケノコを掘らせてもらっていた)
 津の通勤圏ではあるので、昔からの集落と共に新しい住宅団地もあり、私の子供も小学生と園児未満だったが、長男と一緒に次男も車で塾に連れて行って終わるまで待っていた。
 「塾の灯の上に増えおり寒の星」海風
 猿が出て、地元のおばあさんの頭の上に載っていじめていたこともあった。
 で、ハヤブサ地区の物語を読んでそこでの生活を思い出したのである。
 私らは宿舎のアパートに住んでいたのだが、かみさんは近くの地元の奥さんと親しくなって、その女性が津市で買い物をした受取人になっていた。自分の祖母のいる時に配達が届くと、また贅沢をしてと叱られるとのこと。別に姑ではなくて、婿取りなので自分自身の祖母なのだが。(婿取りの多いところで、塾の女先生も婿取りで、ここは長男には勉強させないとこぼしていた。勉強ができて東京へ行くと帰ってこないからだと)
 なぜ、簡単に親しくなったかというと、アパートの主婦たちも何もない田舎なので、表に出て子供たちを遊せたりしていて、地元の女性もそれに加わっていたようだ。

 津は紀伊半島の付け根のあたりなのだが、それでも雨の多い紀伊半島で、アパートの2階まで苔が登ってくるし、カメムシも大量発生したり。
 一度、大雨が降って津市から帰る途中だったので、怖くなって少し納まるまで車を止めていたこともあった。で、帰ってみると、地元の老人が用水路で流されたらしいと大騒ぎになっているとのこと。で、消防団の出番になったが、結局川まで流されて助からなかった。

 泥棒もいいた。地元では札付きなので誰でも知っていたのだが、例によって、主婦たちが外に集まっていた時に刑事さんが来た。「え! 本当の刑事さん」とか大騒ぎになったが、犯人がここで自転車を盗んで、それに乗って泥棒に入る家にいった、とのこと。
 で、かみさんが自転車置き場に行くと、あれ! ない。ということで、土曜日に来るまで津の警察署まで取りに行った。警察は持ってきてくれないのである。

 で、外に集まっている主婦たちの楽しみの一つが郵便配達なのである。鬼界が島の俊寛みたいに便りに飢えているのである。丁度、テレビアニメのポストマン・パットをやっていたが、郵便配達も主婦たちに頼りにされていて、受け取りだけでなく、郵便局まで持って行ってもらうのだった。

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